東京ナイト

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「中国文化大革命の大宣伝 上」

2009-09-03 23:37:22 | 
すみません。仕事が微妙に忙しくて更新が滞っていました。
で、本は「中国文化大革命の大宣伝 上」草森紳一(芸術新聞社)



「広告批評」に11年も連載されていたものをまとめたもの。なんと上下巻で1200ページもあります。
昔からどうも文化大革命が気になってしょうがないのですが、たぶんそれは高校生の頃、この連載を読んでいたからなのでしょう。
なので、ずっとこの連載を読み直したかったのですが、今回ようやく本になったようです。連載終了からずいぶん時間もたつのに、しかもこの出版不況の中、芸術新聞社、頑張っています。

内容は、タイトルの通り、文化大革命を「宣伝」という視点で捉えたもの。著者は中国に行ったことはないようですが膨大な文献から壮大な権力闘争が生んだ大混乱を読み解いていきます。

1966年、大躍進の失敗により権力にかげりの見えてきた毛沢東は、彼の指示を聞かず改革路線を進める走資派への対抗策として紅衛兵を生み出します。
それからの10年、4人組、林彪、周恩来、劉少奇、華国鋒・・・、様々な権力者たちの思惑で中国は大混乱に陥ります。子どもが親を告発し、党の幹部も粛清され、昨日まで正義だったものが今日には反革命のレッテルを貼られる恐ろしい時代が続くのです。
そうしためまぐるしい変化を読み解く鍵が「人民日報」や壁新聞。それぞれの陣営が様々な思惑で書くプロパガンダは非常に複雑で深読みが必要になります。中国の人々は人民日報の行間から権力者の失墜を知り、政治の風向きを読み解いていくのです。

まだ上巻しか読んでいないのですが、本当に人って怖いなと思いました。矛盾に満ちた巨人、毛沢東はもちろん、末端の人々もそれぞれの思惑で行動し、それが悲劇を次々と生んでいく過程を読み進めていくと、こちらのパワーが吸い取られるようで、ぐったりしてしまいます。でも、あまりの面白さに本は置けない、というものすごい力作。本当にオススメです!