気ままに

大船での気ままな生活日誌

楽茶碗と新春の”雪松図”

2013-12-16 10:22:07 | Weblog
よくみれば、”楽茶碗と新春の雪松図”であった。あわてんぼうの私メは、もう国宝の丸山応挙の雪松図も展示されているものとばかり思っていた。そしたら、それは、新春の1月4日からの展示であった(汗)。同類が随分、いるらしく、入り口にも、その旨の貼り紙があったし、どうも受付に文句を言っているらしい御仁にも出くわした。たしかに、ひっかかるのは無理はないと思った。しかし、そのお蔭で、場内は閑散としていて、こんなに静かに名品の数々をみられたのだから、怪我の功名というべきだろう。

少し前に観た、海老蔵主演の映画”利休にたずねよ”で、本物の長次郎の黒楽茶碗が出ていたこともあって、是非、三井記念美術館で開催されている本展を年内に観たいと思っていた。

展示室1には、楽茶碗ではなく、16世紀の高麗茶碗が展示されていて、その中に井戸茶碗もあった。映画では三井家伝来という、井戸茶碗/銘春日も出演しているので、ひょっとしたらと期待していたが、そこに在ったのは大井戸茶碗だった。でもそれは、利休の弟子でもある織田有楽所持ということなので関係なくはない。釉景気のうつくしい斗々屋茶碗や古三島茶碗もここ。

そして、個室の展示室2においでになるのは、粉をかけたような白い粉引茶碗/三好粉引。筆先のような模様があるが、それは火間といい、釉がかからず、土のみえるところで粉引の見所のひとつだという。なかなかいいな。

展示室3の”汝庵”には御所丸茶碗が出ていて、松花堂昭乗作の竹茶杓/銘翁も。若き日の利休が、自作の竹茶杓をみせ、武野紹鴎に弟子入りを許される映画の場面を思い出した。

そして、本日のメインイベント、展示室5の楽茶碗。長次郎作が3点。その中でも、端正で、落ち着き払ったような風格の、重文、黒楽茶碗銘俊寛。長次郎初期の作で、もちろん利休の創意が入っている。銘は利休の命名だが、薩摩の門人に三椀送ったが、この茶碗を残し他の二碗が送り返されてきたので、鬼界ヶ島に残された俊寛僧都に見たてたという(笑)。

そして三代目、道入。人呼んで、ノンコウ、ぼくも好き。名品が多いことで知られる。ノンコウ7種のひとつ、赤楽茶碗/銘鵺(ぬえ)が光輝いている。鵺の由来は大きな黒い化粧の部分。黒楽茶碗/銘雪夜も黒光りしていた。

そして、楽家四代、五代、六代とつづく。進んだり、先祖帰りしたりしながらも、長次郎の伝統を引き継いでいく。展示室7では、さらに代を重ね、また、三井高裕の作品も。いい茶碗ばかり。

絵画部門では、雪松図の代わりは、応挙の”山水図”。広い空間をとり、奥行き感、立体感を出すことを意識的に創作した初期の作品だそうだ。なるほどと思って観た。応挙の”稲麻綿図”も良かった。一枚の葉を一気呵成に一筆で描いたものだそうだ。さすがという感じ。モーツアルトの楽譜がほとんど修正のあともなく、一気呵成に音符が書かれていたそうだが、それみたいだな、と思った。麻と綿は反物の材料、稲は年貢米として納める、呉服商と両替商の三井家には関係深い作物なのだ、という意味の解説には、またなるほどと思った(笑)。

はじめに書いたように、とても静かに鑑賞でき、満足。いいときに来た。でも、またお正月にも行きますよ。国宝、雪松図を見ないわけにはいかないノダ。

長次郎 黒楽茶碗 銘俊寛


三代道入(ノンコウ)赤楽茶碗 銘鵺


四代一入 黒楽四方茶碗 銘四ッ目


六代左入 赤楽 檜垣の絵


三井高裕 赤楽亀絵茶碗





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