石油と中東

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BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:石油篇(3)

2018-06-19 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0446BpOil2018.pdf

 

2018.6.19

前田 高行

 

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2018」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

 

1.世界の石油の埋蔵量と可採年数(続き)

(チャペス時代に意図的に埋蔵量を引き上げたベネズエラ!)

(3)8カ国の国別石油埋蔵量の推移(2000-2017年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-G03.pdf 参照)

 ここではOPEC加盟国のベネズエラ、サウジアラビア、イラン、イラク及びUAEの5カ国にロシア、米国、ブラジルを加えた計8カ国について2000年から2017年までの埋蔵量の推移を追ってみる。

 

ベネズエラは2017年末の埋蔵量が3,032億バレルであり世界で唯一3,000億バレルを超える埋蔵量を保有している。同国が世界一になったのは6年前の2010年からである。2000年当時の同国の埋蔵量は現在の4分の1の768億バレルにすぎず、サウジアラビアはもとよりイラン、イラク、UAEよりも少なかった。ところが同国は2007年に埋蔵量を994億バレルに引き上げると翌2008年にはさらに2倍弱の1,723億バレルとしたのである。そして続く2009年、2010年にも連続して大幅に引き上げ、それまで世界のトップであったサウジアラビアを抜き去り石油埋蔵量世界一の国となった。

 

しかし世界の石油関係者たちの中にはベネズエラの発表数値に疑問を持つ者が少なくない。埋蔵量の上方修正が2006年のチャベス大統領(当時)の再選以来顕著になっていることから、同大統領が国威発揚を狙って数値を意図的に水増ししている可能性が否定できないのである。埋蔵量が多いことは将来の増産余力があることを示しているため、ベネズエラがサウジアラビアなどの中東OPEC諸国に対抗し、さらには世界最大の石油消費国米国を牽制する意図もうかがわれるのである。しかしながらその後の油価の低迷及び経済の混乱により現在同国は財政破綻に直面しており、生産量が大幅に落ち込んでいる。このためベネズエラは埋蔵量世界一の産油国としての威力が失われ、OPEC内部での発言力も低下しているようである。

 

実はベネズエラのように国威発揚のため埋蔵量を引き挙げたOPEC産油国は他にもある。それは互いの対抗心から埋蔵量を競い合っているイランとイラクである。2000年末の埋蔵量はイラク1,125億バレル、イラン995億バレルであったが、2002年にはイランが1,307億バレルに上方修正しイラクを逆転した。その後2009年までその状態が続いたが、2010年にイランが再度上方修正し、イラクとの差を広げると、イラクは2011年に埋蔵量を見直し、結局2017年末の埋蔵量はイラン1,572億バレル、イラク1,486億バレルで両国の差は100億バレル未満となっている。

 

イラクはサダム政権の時代、そしてイランは核開発問題を巡り国際社会の経済制裁を受けていた時代は共に石油開発は殆ど進展しなかった。このような中で両国が度々埋蔵量を上方修正した理由は互いのライバル意識で順位を競い合ったからとしか説明がつかないのである。OPEC加盟国であるベネズエラ、イランおよびイラクの埋蔵量数値は信ぴょう性が疑わしいと言わざるを得ない。

 

 これに対して同じOPEC加盟国でもサウジアラビアやUAEの公表値は全く変化していない。両国とも1990年末に改訂して以来現在まで埋蔵量は殆ど変化していない。2017年末の埋蔵量はサウジアラビアが2,662億バレル、UAEは978億バレルであり20年以上横ばい状態である。ただし横這いと言う意味は毎年、生産量を補う埋蔵量の追加があったことを意味している。例えばサウジアラビアの場合は1990年から2016年までの生産量は900~1,000万B/Dであり年率に換算すると33~37億バレルであるから、これと同量の埋蔵量が追加されてきたことになる。これは毎年超大型油田を発見しているのと同じことなのである。UAEについても同じことが言える。サウジアラビアもUAEも探鉱開発では古い歴史があり国内には石油のフロンティアと呼べる場所は殆ど見当たらない。にもかかわらず両国が埋蔵量を維持できた理由は、一つは既開発油田からの回収率をアップしたことであり、もう一つは既存油田の下の深部地層に新たな油田を発見したためである。

 

 非OPECのロシア、米国及びブラジル3カ国の2000年末と2017年末を比較するとロシアは漸減傾向にあり、米国とブラジルは増加している。即ち2000年末の埋蔵量はロシア1,121億バレル、米国304億バレル、ブラジル85億バレルに対し、2017年のそれはロシア1,062億バレル、米国500億バレル、ブラジル128億バレルでありロシアは2000年当時よりわずかではあるが減少しており、一方、米国は1.6倍、ブラジルも1.5倍近い伸びである。特に米国の場合は2009年末までは横ばい状態を続け、2010年に350億バレルに上方修正され、以後2014年まで毎年大きく増加している。これはシェールオイルの開発が軌道に乗ったことが大きいと考えられる。

 

 (続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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