石油と中東

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BPエネルギー統計レポート2012年版解説シリーズ:石油篇4 埋蔵量(4)

2012-06-30 | その他

(世界の埋蔵量に占めるOPECの比率は7割超!)
 
 (4)OPECと非OPECの比率
 既に述べた通り2011年末ではベネズエラとサウジアラビアが世界1位と2位であるが、両国は共にOPECのメンバーである。また両国の他にイラン、イラク、クウェイト、UAE、リビア及びナイジェリアが石油埋蔵量の上位10カ国に名を連ねている。実にベストテンのうち8カ国がOPEC加盟国なのである(非OPECで世界ベストテンに入っているのはカナダ及びロシアの2カ国)。OPEC全加盟国の埋蔵量を合計すると1兆2千億バレルに達し、世界全体(1.65兆バレル)の72%を占めている。
 
(注)OPEC加盟国12カ国(石油埋蔵量の多い順):
ベネズエラ、サウジアラビア、イラン、イラク、クウェイト、UAE、リビア、ナイジェリア、カタール、アンゴラ、アルジェリア、エクアドル

 加盟国の中にはベネズエラ、イラン、イラクのように埋蔵量の公表数値に水増しの疑いがある国もあるが(前述)、統計上で見る限りOPECの存在感は大きい。OPECは先般の総会で全体の生産枠を3千万B/Dに抑えることを決議したように、生産量が議論の基準となっている。しかし将来の生産能力を考えた場合、埋蔵量の多寡が決定的な意味を持ってくる。この点からOPEC加盟国の埋蔵量が世界全体の7割以上を占めていることはOPECが将来にわたり石油エネルギーの分野で大きな存在感を維持すると言って間違いないであろう。OPEC加盟国の間でもベネズエラ、イラン、イラクなどが埋蔵量の多寡に拘泥するのはその延長線上だと考えられる。

 OPEC対非OPECの埋蔵量比率の推移を見ると、1980年末はOPEC62%に対し非OPECは38%であった。その後この比率は1985年末にはOPEC66%、非OPEC34%、さらに1990年末にはOPEC74%に対し非OPEC26%とOPECの比率が10ポイント以上アップしている。これは1970年代の二度にわたる石油ショックの結果、1980年代は需要の低迷と価格の下落が同時に発生、非OPEC諸国における石油開発意欲が低下したことによりOPECのシェアが相対的にアップしたためと考えられる。
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G04.pdf参照)

 しかし2000年代に入り世界景気が回復し、中国・インドが牽引車となって石油需要が急速に伸び価格が上昇した。これに触発されてブラジル、ロシア・中央アジアなどの非OPEC諸国で石油の探鉱開発が活発となり、2005年末にはOPEC68%、非OPEC32%と非OPECの比率が再度上昇している。この傾向は基本的に変化は無いのであるが、再三言及したようにベネズエラなど一部のOPEC産油国が埋蔵量を大幅に上方修正したため、2011年末のOPECと非OPECの比率は72%対28%とOPECの比率が上昇している。

 前項(3)で取り上げた8カ国のうちOPEC3カ国(ベネズエラ、イラン、イラク)と非OPEC2カ国(米国、ブラジル)はいずれも埋蔵量が増加している。しかし両者の性格は全く異なることを理解しなければならない。ベネズエラなどOPEC3カ国は政府が石油を独占し国際石油企業のアクセスを拒否している。これらの国の埋蔵量の増加には国威発揚と言う動機が働いている。これに対して石油産業が完全に民間にゆだねられている米国、或いは国際石油企業との合弁がごく普通に行われているブラジルのような国では埋蔵量を水増しすることはタブーである。何故ならもし水増しの事実が露見すれば当該石油企業は株主訴訟の危険に晒されるからである。かつてシェルが埋蔵量を大幅に下方修正して大問題となったが、私企業としては決算時に公表する埋蔵量は細心の注意を払った数値でなければならないのである。

 ただ一般論としては埋蔵量に常にあいまいさがつきまとうのは避けられない。本レポートで取り上げたBPの他にも米国エネルギー省(DOE)やOPECも各国別の埋蔵量を公表している。しかしいずれも少しずつ数値が異なる。埋蔵量そのものを科学的に確定することが困難であると同時にそれぞれの査定に(たとえ米国の政府機関と言えども)政治的判断が加わる。結局「埋蔵量」とは掴みどころの無いものとしか言いようがないのである。

 (石油篇埋蔵量完)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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