石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2010年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇(3)

2010-07-27 | その他

(注)本シリーズ1~3は「マイライブラリー」に一括掲載されています。

BPの「BP Statistical Report of World Energy 2010」をもとに本シリーズではこれまで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル=629万バレル(1兆立方メートル=62.9億バレル)である。

3.世界の石油と天然ガスの消費量

(1)2009年の石油と天然ガスの地域別合計消費量

  2009年の世界の石油消費量は日量8,408万バレル(以下B/D)であり、これに対して天然ガスの消費量は年間2兆9,404億立方メートル(以下㎥)であった。天然ガスの消費量を石油に換算すると5,067万B/Dとなり、従って石油と天然ガスを合わせた1日当りの消費量は1億3,475万B/Dとなる。両者の比率は石油62%、天然ガス38%でほぼ3:2の割合である。

  消費量を地域別に見ると(上図参照、拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-92OilandGasConsumByRe.gif)、欧州・ユーラシアが最も多く石油換算で3,761万B/Dであり、これに次ぐのが北米の3,680万B/Dである。但し両地域を比較すると、欧州・ユーラシアは石油の消費量が1,937万B/Dに対して天然ガスの消費量は1,824万B/D(石油換算)であり、石油と天然ガスがほぼ同じであるが、北米は石油2,283万B/D、天然ガス1,397万B/D(石油換算)と石油の消費量が天然ガスの1.6倍に達している。

  欧州・ユーラシア、北米に続いて消費量が多いのはアジア・大洋州である。同地域の消費量は石油が2,600万B/D、天然ガスが856万B/D(石油換算)の合計3,456万B/Dであり、天然ガスは石油の3分の1に満たない。これら3地域の世界全体に占める割合は、欧州・ユーラシア28%、北米27%、アジア・大洋州26%であり、3地域を合わせると世界全体の81%に達する。残る3地域(中南米、中東、アフリカ)は全て併せても19%に過ぎず、石油及び天然ガスの消費が先進国及びアジアの新興工業地帯に集中していることがわかる。

(2)国別消費量(上位20カ国)

 消費量を国別に見ると(詳細は表「石油と天然ガスの国別消費量上位20カ国(2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-1-92OilGasConsumpByCountry2009.xps参照)、世界で石油と天然ガスの合計消費量が最も多いのは米国である。同国の消費量は石油換算で2,983万B/D、実に世界の4分の1弱の石油と天然ガスを消費しているのである。2位の中国ですらその消費量は米国の3分の1であることに比べると、米国が如何にエネルギーを浪費しているかが解る。

  米国に次いで消費量が多いのは中国の1,015万B/D(石油換算)である。同国は石油の消費量は世界2位(863万B/D)、天然ガスは世界5位(石油換算153万B/D)であり、天然ガスの消費量は石油の6分の1に過ぎない。第3位、第4位はそれぞれロシア(石油換算941万B/D)、日本(同590万B/D)である。日中両国を比較すると、石油の消費量は中国が日本の2倍であり、天然ガスはほぼ同じである。

  5位のインド(同408万B/D)以下はイラン(401万B/D)、サウジアラビア(395万B/D)、カナダ(383万B/D)、ドイツ(377万B/D)、メキシコ(314万B/D)と続いている。

(3)1980年~2009年の消費量の推移

 1980年から2009年までの石油と天然ガスの合計消費量の推移を追ってみると(詳細は図「石油+天然ガス消費量(1980-2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-95aOilGasConsump1980-.gif参照)、1980年の石油と天然ガスの合計消費量は86百万B/D(石油換算、以下同じ)であった。その後消費量は4年連続して減少したが、1985年以降は一貫して増加傾向を示し、1990年には1億B/Dを突破(内訳:石油6,669万B/D、天然ガス3,378万B/D)、2008年には1億3,700万B/Dに達した。しかし2009年は前年比1.2%減少しており、これは26年ぶりのことである。

  2009年の消費量は1980年に比べて1.6倍に増加しているが、石油と天然ガスそれぞれについては石油の伸び率が1.4倍に対し、天然ガスは2倍である。過去30年の間に天然ガスの消費が石油を大きく上回っていることがわかる。

  石油と天然ガスの合計消費量の推移を米国、日本、中国及びインドの4カ国について比較すると(図「4カ国の石油・天然ガス合計消費量」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-95bOilGasConsump1980-.gif参照)、1980年の各国の消費量は米国2,676万B/Dに対し日本515万B/D、中国194万B/D、インド66万B/Dであった。米国は日本の5倍、中国の14倍、インドの41倍であり、中国、インドとは圧倒的な差があった。

  米国の消費量は1983年を底として増え続け2007年には過去最高の3,195万B/Dを記録している。日本はこの間大きな変動が無く90年代後半以降は消費量が漸減しており、2009年には20年ぶりに600万B/Dを割っている。

  これに対して中国とインドは1980年から2009年まで前年を下回ることなく消費量は毎年増え続けている。特に2000年以降の中国の伸びは大きく2004年には日本の消費量を追い抜き、2009年には日本の1.7倍の1,015万B/Dに達し、1980年にくらべ実に5.2倍の伸びである。またインドの場合も1980年の消費量(66万B/D)が2009年には6.2倍の408万B/Dに増加している。この増加傾向が続けば今後10年以内に日本はインドに追い抜かれそうである

(石油+天然ガス篇完)

(*)今回でBP統計解説シリーズは完結しました。各シリーズはHP「前田高行論稿集」で一括してご覧いただけます。

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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