石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

巨額の利益、Exxon197億ドル、アラムコ424億ドル:2022年7-9月期石油企業決算速報 (7)

2022-11-17 | 今日のニュース
  1. IOCs五社とアラムコの業績比較

ここではIOCs五社とサウジアラムコの当期利益、売上高、売上高利益率、キャッシュ・フロー及び設備投資を比較する。

 

(IOC5社の利益合計を上回るアラムコ1社の利益!)

II. 純利益[1](図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-52.pdf 参照)

IOCs5社の7-9月期は前期(4-6月期)に続き原油が高値に推移した結果、利益はbpを除き高い水準を維持した。IOCs5社の中で利益が最も多かったのはExxonMobilの197億ドルであり、chevronが112億ドルで続いている。Shell及びTotalEnergiesは66~67億ドルで並んでいる。これに対しbpは5社の中で唯一▲22億ドルの損失を計上している。後述するように同社は過去2年の四半期決算でも赤字が度重なっており、収益力で同業他社に大きく見劣りしている。

アラムコの7-9月期損益は424億ドルの大幅な黒字であり、IOCs5社の利益合計額421億ドルを上回る圧倒的な収益力を誇っている。

 

(原油高値推移で売上堅調!)

2.当期売上高[2] (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-51.pdf 参照)

2022年7-9月期の各社売上高は前期に引き続き好調であった。IOC5社の中で最高の売上高を示したのはExxonMobilの1,121億ドルであり、唯一1千億ドルを超えている。ExxonMobilに次いでShellが957億ドルで、TotalEnergies(690億ドル)、chevron(635億ドル)が並んでいる。bpの売上高は578億ドルでExxonMobilの2分の1にとどまっている。

これに対しアラムコの売上高は1,637億ドルであった。IOCs5社の合計売上高は3,982億ドルでアラムコ1社の売上の2.4倍に達する。因みに、ExxonMobilの売上高を100とした場合、Shellは85、TotalEnergies 62、chevron 57, bp 52であり、アラムコの売上高はExxonMobilの1.5倍である。

 

(アラムコの利益率は26%、IOCs5社トップはchevronの17.7%!)

3.当期売上高利益率 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-53.pdf 参照)

IOCs5社の今期売上高利益率はchevronが17.7%と最も高く、続いてExxonMobil 17.5%で二桁の利益率をあげたのはこの2社だけであり、bpはIOCs5社の中で唯一▲3.7%であった。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

 

[1] 「純利益」は各社資料から下記項目を抽出した。

ExxonMobil:Net income attributable to ExxonMobil (U.S. GAAP)

Shell:Incom/loss attributabel to shareholders

bp:Profit (loss) for the period; Attributable to BP shareholders

TotalEnergies:Netincome (TotalEnergies share)

Chevron:Net income

SaudiAramco: Net income by consolidated financial statement (end year) / q1,q2&q3 interim report

[2] 「売上高」は各社資料から下記項目を抽出した。

ExxonMobil:Total revenues and other income

Shell:Revenue

bp:Total revenue and other income

TotalEnergies:Sales

Chevron:Sales and other operating revenues

SaudiAramco: Revenue and other income related to sales,   consolidated financial statement of income, interim

 

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SF小説:「ナクバの東」(52)

2022-11-17 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

Part II:「エスニック・クレンザー(民族浄化剤)

 

52. 長女アナット(4)

 

 『ドクター・ジルゴ』という呼び名は父と娘がつけた符牒である。ロシア新移民として農民の両親と一緒にイスラエルに移住してきた彼は街から遠く離れたキブツで共同生活の洗礼を受けた。しかし彼にとってキブツの共同生活は苦痛以外の何物でもなくその生活にどうしても馴染めなかった。彼はキブツを脱出するため医者を志した。

 

医者になった彼はロシアの大作家パステルナークの著書に因んで自分のことを『ドクトル・ジバゴ』と自称した。一方、周囲の友人達は偏執狂的で時には二重人格的な言動を弄する彼のことを『ドクター・ジキル』と名付けた。この二つの名前を足して二で割った結果が『ドクター・ジルゴ』という訳である。

「お父様のおっしゃる通り彼は米国に留学して二年前に帰ってきたわ。ところが彼ったら何とシャロームと同じ病院に就職したのよ。でも安心して、お父様。友人から聞いた話では彼はもう妹には興味が無いみたい。二人とも色恋沙汰より自分の研究が大切みたい。」

 

 「『ドクター・ジルゴ』の用件って何だい?」

 

 「うーん。一寸待ってね。」

 「彼曰く、ある研究で素晴らしいものを発見したので是非話を聞いてほしい。お父様を失望させることは絶対ありませんからって。彼のメールはこれで何回目かしら。面会を求めるしつこさはシャロームを追っかけたストーカーの頃と変わってないみたい。どうします、お父様?」

 

『シャイ・ロック』はふと彼に会ってみようかと思った。実は少し前、留学帰りの医学博士があるとんでもないものを発見したらしい、と言う話をかつての部下から聞いていたのである。その『とんでもないもの』がどのようなものかは部下自身も良く知らなかったようで、雲をつかむような話であった。しかしその話はどこかで彼の第六感をくすぐるものがあった。これまで数々の戦闘をくぐり抜けてきた『シャイ・ロック』には動物的カンとでも言うべきものが備わっており、彼は自分のそれに全幅の信頼を置いているのである。

 

「よし、一度会ってみよう。段取りはお前に任せるよ。」

 

 父の予定表を確かめるとアナットは早速『ドクター・ジルゴ』に返事を打ち始めた。

 

(続く)

 

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

 

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