(2) LNG貿易(続き)
(ついにトップに躍り出たオーストラリア、急成長する米国!)
(2-2) 2010年~2020年の国別輸出量の推移
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-1-G03.pdf 参照)
2010年に3,024億㎥であったLNGの輸出量は2012年から2015年までは停滞したが、2017年及び2018年は9%強、2019年は12%の高い増加率を示した。この結果、2020年のLNG輸出総量は4,879億㎥に達しており、これは2010年の1.6倍であり、この間の年平均成長率は5.5%を記録している。
国別で見ると2010年当時はカタールの輸出量が778億㎥で全世界に占める割合は26%であり、これに次いでインドネシア324億㎥(11%)、マレーシア310億㎥(10%)、オーストラリア258億㎥(9%)であった。その後カタールの輸出量が急激に増加、2011年には1千億億㎥を突破、世界に占める割合も3割を超えている。カタールは年産7,700万トン体制と呼ばれる世界最大のLNG生産能力を確立したことが飛躍の大きな要因である。一方。このころから米国でシェールガスの開発が急速に発展しカタールの過剰設備が危惧されたが[1]、福島原発事故によるLNGの突発的需要増で設備はフル稼働の状況となった。但し2013年の1,058億㎥、シェア32%をピークにカタールの輸出量は足踏み状態となり、その結果シェアは下降気味であり、2017年には30%を割り、2020年は2010年を下回るシェア21.7%まで低下している。
一方でロシアがLNG輸出能力を高めつつあり、またオーストラリアでは新しいLNG輸出基地が稼働を始め、さらに米国でも輸出が始まるなどカタールの地位を脅かす動きが出ている。オーストラリアの2020年の輸出量は2010年の4倍弱の1,062億㎥に達し、ついにカタールをしのいでLNG輸出世界一になった。
特筆すべきは近年急速に輸出を伸ばしている米国である。同国は2015年まで日本向けアラスカ産LNG数億㎥の輸出にとどまっていたが、シェールガスの開発により国内需要を上回る天然ガスが生産されるようになり、LNGの輸出基地建設に着手した。この結果輸出量は2016年の40億㎥から2017年には171億㎥に急増、2020年にはついに614億㎥を輸出し、カタール、オーストラリアに次ぐ世界第3位のLNG輸出大国になっている。
インドネシアはかつてカタールに次ぐLNG輸出大国であったが、ここ数年減少に歯止めがかからず2010年の輸出量324億㎥が、2020年には168億㎥に半減している。同国は大きな人口を抱えているため今後さらに輸出余力が乏しくなるのは間違いなく、かつて石油の輸出国から純輸入国に転落したようにいずれ天然ガスについても同様の道を歩む可能性が高い。
(続く)
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[1] 拙稿「シェールガス、カタールを走らす」参照。