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石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

中国、世界最大のガス輸入国に:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ天然ガス篇 (22完)

2019-09-03 | BP統計

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0477BpGas2019.pdf

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。

 *BPホームページ:

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

 

7.天然ガスの価格(続き)

(ヨーロッパとの価格差は縮小、米国とは拡大傾向!)

(2)日本のLNG価格を1とした場合のヨーロッパ、米国の天然ガス価格

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-5-G02.pdf 参照)

 ここで取り上げた日本とEUと米国の天然ガスの価格は日本がCIF価格であり、米国はパイプラインの受け渡しポイントHenry Hubにおける価格である。従って米国と日本を単純比較することはできないが、その点を含んだ上で日本のLNG価格を1とした場合の2000年から2018年までのヨーロッパ及び米国との格差を比較すると、2000年のヨーロッパ価格は日本の0.57倍、米国は0.89倍であった。つまりヨーロッパ価格は日本より4割安く米国価格は1割程度安かったのである。

 

その後2002年までは3者の価格差に大きな変化はなかったが、2003年には米国Henry Hub価格が上昇、日本との相対価格は1.18倍に逆転した。原油価格が安定したため原油にリンクした日本のLNG価格が低く抑えられたのである。その後も米国の価格は上昇、2005年には米国価格は日本の1.45倍まで格差が広がった。つまり2003年から2005年までの3年間は米国の天然ガス価格の方が日本のLNG価格より高かったのである。一方この間にヨーロッパの相対価格も徐々に上昇し2005年には日本価格を上回り1.2倍になり、翌年も1.1倍となった。即ち2005年は日本価格が米国価格及びヨーロッパ価格のいずれよりも安かったのである。

 

しかし2007年には再び日本価格がヨーロッパ及び米国価格を上回るようになり、特に2009年以降は原油価格の急騰に伴い日本の価格が急上昇したのに対しヨーロッパ価格はさほど大きな変動が見られず、米国はシェールガスの開発が本格化し日本とは逆に価格が急速に下落した。その結果、3地域の価格格差は拡大し、2012年には日本の価格は米国の6倍強になっている。2018年は日本とヨーロッパの価格差は縮小する一方、米国との価格差はむしろ拡大する傾向にあり、日本=1に対してヨーロッパ価格は2割安い0.8倍であり、米国価格は日本の3分の1強の水準である。

 

 今後この格差がどうなるか予断を許さないが、豪州、東アフリカ等世界各地で天然ガスの開発が進み、また米国のLNG輸出が開始されるとLNGのスポット価格は下がる可能性がある。またパプアニューギニア、豪州、モザンビーク、米国シェールガスなどのLNGプロジェクトに日本企業が資本参加することで安定的な価格と量の確保が可能となる。

 

最近ではLNG市場が拡大し、スポット取引が増加している。また日本のLNG長期契約が近く更改時期を迎える。日本のユーザーはこれまでの原油価格にリンクした硬直的な値決め方式から転売条項を含めたより柔軟な契約を目指している。天然ガス貿易の重点がパイプライン方式からLNG方式に移りつつあることも考慮すると今後天然ガスが石油と同じ市況商品の性格を強めるものと考えられる。

 

(天然ガス篇完)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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サウジアラムコと五大国際石油企業の2019年1-6月期業績比較 (3)

2019-09-03 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0478AramcoVsIoc2019JanJune.pdf

 

(メジャー5社の合計額を上回るアラムコの利益!)

2.純利益(Net income) (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-6-02.pdf 参照)

 今年上半期のアラムコの純利益は469億ドルであった。これに対してIOC5社は最も利益の多いShellが90億ドル、これにつづくのがChevron 69億ドル、Total 59億ドル、ExxonMobil 55億ドルであり、BPは最も少なく 48億ドルであった。

 

 なお「純利益(Net income)」の言葉は各社決算資料で下記のごとく表現が異なるが、「株主に帰属する純利益」と呼ばれるものであり同じものと考えられる。

 

Saudi Aramco: Net income attributable to shareholder

Shell: Income/loss attributable to shareholders

Chevron: Net income

Total Consolidated net income (Group share)

ExxonMobil: Net income attributable to ExxonMobil (U.S. GAAP)

BP: Profit (loss) for the period; Attributable to BP shareholders

 

 上記のごとくアラムコの純利益はIOC各社と大きな開きがあり、アラムコを100とした場合、各社の利益水準はShell 19、Chevron 15、Total 13、ExxonMobil 12、BP 10となる。いずれもアラムコの2割以下であり、5社でトップのShellでもアラムコの5分の1、BPは10分の1にとどまっている。IOC5社の利益を合算しても321億ドルであり、アラムコ1社に及ばない。

 

 国営企業として長い歴史を有し既に確固たる収益基盤を確立しているアラムコと日々競争に晒され利益の確保に苦闘する純粋の民間企業であるIOC5社の利益を単純に比較することは無謀とも言えよう。しかし国際会計基準に沿った決算書類の費目を横並びに比較することで格差の理由がある程度浮かび上がると考えられる。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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