(注)本レポート1~18回は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0318BpOil2014.pdf
(2000年の1.5倍になった米国の埋蔵量!)
(4)8カ国の国別石油埋蔵量の推移(2000-2013年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G03.pdf 参照)
ここではOPEC加盟国のベネズエラ、サウジアラビア、イラン、イラク及びUAEの5カ国にロシア、米国、ブラジルを加えた計8カ国について2000年から2013年までの埋蔵量の推移を追ってみる。
ベネズエラは2013年末の埋蔵量が2,983億バレルで世界一であるが、世界一になったのは3年前の2010年からである。2000年当時の同国の埋蔵量は現在の4分の1の768億バレルにすぎず、イラン、イラク、UAEよりも少なかった。ところが同国は2007年に埋蔵量を994億バレルに引き上げると翌2008年にはさらに2倍弱の1,723億バレルとしたのである。そして続く2009年、2010年にも連続して大幅に引き上げ、それまで世界のトップであったサウジアラビアを抜き去り石油埋蔵量世界一の国となった。
しかし世界の石油関係者たちの中にはベネズエラの発表数値に疑問を持つ者が少なくない。埋蔵量の上方修正が2006年のチャベス前大統領再選以来顕著になっていることから、大統領が国威発揚を狙って数値を意図的に水増ししている可能性が否定できないのである。埋蔵量が多いことは将来の増産余力があることを示しているため、OPEC強硬派と言われるチャベス大統領がサウジアラビアなどのOPEC穏健派諸国に対抗し、さらには世界最大の石油消費国米国を牽制する意図もうかがわれるのである。同大統領の死去により南米一の産油国ベネズエラが今後どのような石油政策をとるのかが注目される。
実はベネズエラのように国威発揚のため埋蔵量を引き挙げているOPEC産油国は他にもある。それは互いの対抗心から埋蔵量を競い合っているイランとイラクである。2000年末の埋蔵量はイラク1,125億バレル、イラン995億バレルであったが、2002年にはイランが1,307億バレルに上方修正しイラクを逆転した。その後2009年までその状態が続いたが、2010年にイランが再度上方修正し、イラクとの差が開くと、イラクは2011年、2012年と2年連続して埋蔵量を見直し、結局2013年末の埋蔵量はイラン1,570億バレル、イラク1,500億バレルでその差はわずかである。
イラク及びイランはいずれも長い間国際社会の経済制裁を受け石油開発は殆ど進展しておらず、イラクで最近漸く国際石油会社による開発が始まったばかりである。このような中で両国が度々埋蔵量を上方修正している理由は互いのライバル意識で順位を競い合ったからとしか説明がつかないのである。OPEC加盟国であるベネズエラ、イランおよびイラクの埋蔵量数値は信ぴょう性が疑わしいと言わざるを得ない。
これに対して同じOPEC加盟国でもサウジアラビアやUAEの公表値は全く変化していない。両国とも1990年末に改訂して以来昨年末まで埋蔵量は殆ど変化していない。2013年末の埋蔵量はサウジアラビアが2,659億バレル、UAEは978億バレルであり20年以上横ばい状態である。横這いと言う意味は毎年、生産量を補う埋蔵量の追加があったことを意味している。例えばサウジアラビアの場合は1990年から2013年までの生産量は900~1,000万B/Dであり、年率に換算すると33~37億バレルであるから、これと同量の埋蔵量が追加されてきたことになる。これは毎年超大型油田を発見しているのと同じことなのである。これはUAEについても言えることである。サウジアラビアもUAEも探鉱開発では古い歴史があり国内には石油のフロンティアと呼べる場所は殆ど見当たらない。にもかかわらず両国が埋蔵量を維持できた理由は、一つは既開発油田からの回収率をアップしたことであり、もう一つは既存油田の下の深部地層に新たな油田を発見したためである。
非OPECのロシア、米国及びブラジルの3カ国も2000年末と2013年末を比較するといずれも埋蔵量が増加している。即ち2000年末の埋蔵量はロシア690億バレル、米国304億バレル、ブラジル85億バレルに対し、2013年のそれはロシア930億バレル、米国442億バレル、ブラジル156億バレルでありブラジルの伸びが最も大きい。但し、3カ国のうちロシアとブラジルは毎年漸増しているのに対して、米国の場合は2009年末までは横ばい状態を続け、2010年に350億バレルに上方修正されている。これはシェールオイルの開発が軌道に乗ったためと考えられる。
(続く)
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