goo blog サービス終了のお知らせ 

石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2011年版解説シリーズ:石油篇(1)

2011-06-14 | その他

(注)本稿は「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」の下記URLで一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0187BpOil2011.pdf

 

BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2011」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

石油篇(1):世界の石油の埋蔵量と可採年数

1.2010年末の埋蔵量
 2010年末の世界の石油確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は1兆3,832億バレル(1バレル=159リットル)である。埋蔵量を地域別に見ると(図「地域別石油埋蔵量(2010年末)」http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-2-91OilReserveByRegion.pdf参照)、中東地域が全世界の埋蔵量の55%を占めている。これに次ぐのが中南米の17%であり、以下ヨーロッパ・ユーラシア地域、アフリカ地域が各10%、北米5%であり、最も少ないのがアジア・大洋州地域の3%である。このように世界の石油埋蔵量は圧倒的に中東地域が多い。

中東と中南米を昨年統計と比べると前者は2%減少、逆に後者は2%増加している。南米のブラジルで沖合深海油田の開発が目覚ましかったことが主たる理由である。中東が圧倒的なシェアを占めていることに変わりはないが、近年南米諸国の伸張は目覚ましく、両地域の格差は年々狭まっている。

 次に国別に見ると、世界で最も石油埋蔵量が多いのはサウジアラビアの2,645億バレルであり、これは世界全体の19%を占めている。第二位はベネズエラ(2,112億バレル、15%)である。埋蔵量が1千億バレルを超える国はこのほかイラン(1,370億バレル、10%)、イラク(1,150億バレル、8%)、クウェイト(1,015億バレル、7%)を含む5カ国あり、このうち4カ国はペルシャ(アラビア)湾岸の産油国である。これら各国の埋蔵量は08年末、09年末ともおなじである。以下ベスト・テンにはUAE、ロシア、リビア、カザフスタン及びナイジェリアが入っている。これら10カ国の世界シェアの合計は82%に達する。このように石油は一部の国に偏在しているのである。 
(詳細は表「世界の国別可採埋蔵量(2010年末)」http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-2-91OilReservesByCountry2010.pdf 参照)

 OPEC12カ国の合計埋蔵量は1兆684億バレル、世界全体の77%を占めている。次回石油篇(2)「生産量」で触れるが、OPECの生産量シェアは42%とそれほど高くはない。しかし埋蔵量シェアが高いことは生産余力或いは潜在的な生産能力が大きいことを示しておりOPEC諸国の存在感は大きいと言えよう。

2.1980年~2010年の埋蔵量及び可採年数の推移
(図「世界の石油埋蔵量と可採年数」http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-2-92OilProvedReservesHistory.pdf 参照)
 1980年以降世界の石油埋蔵量は一貫して増加している。「埋蔵量」は、[ 前年末埋蔵量 + 新規発見(又は追加)埋蔵量 - 当年中の生産量]、の数式で表わされる。従って埋蔵量が増加することは新規発見又は追加埋蔵量が当年の生産量を上回っていることを示している。

 1980年代後半に埋蔵量が大幅に増えたのは1979年の第二次オイルショックにより石油価格が高騰したため80年代前半に石油開発に拍車がかかり、その成果が現れた結果だと考えられる。1990年代末以降は中国、インドなど開発途上国の経済が拡大し、それにつれて石油需要が増加したため、メキシコ湾、ブラジル沖など深海部や中央アジアで石油の探鉱が盛んに行われた結果、埋蔵量の増加につながっている。

2010年末の可採年数(R/P)は46年である。可採年数とは埋蔵量を同じ年の生産量で割った数値であるが、これは現在の生産水準があと何年続けられるかを示している。オイルショック直後の1980年以降、その推移を見ると1980年に29年であったものが80年代末には40年以上に伸びており、その後は40年前後で推移している。そして2004年から2009年までの5年間で可採年数は5年増えたが、2010年は前年に比べR/Pは減少している。

2000年以降メキシコ湾、ブラジル沖などの深海域或いは中央アジアで新たな油田の発見が相次いだことにより追加される埋蔵量が消費量を上回ったためR/Pが増加した。しかしサブプライムショック、リーマンショックなどの影響により世界の景気が後退、石油開発熱も冷めつつあり埋蔵量の追加ペースが鈍っている。このため、R/Pは再び踊り場にさしかかったように見受けられる。

 (石油篇続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする