(注)本シリーズ1~6は「マイライブラリー」に一括掲載されています。
BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2010」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
5.世界の天然ガス貿易(その2):LNGによる輸出入
1964年、アルジェリアからフランス向けを皮切りに始まったLNG貿易は、近年輸出国、輸入国及び貿易量それぞれの面で急速に拡大している。2009年のLNG輸出国の数は18カ国、輸入国は22カ国に上り、それらの国々が取引したLNGの総量は2,428億立方米(以下㎥)に達した。貿易国のうち米国及びベルギーは輸出・輸入双方の実績があるため、実際にLNG貿易に関与している国の数は38カ国となる。前年の2008年は32カ国であったため過去1年間で6カ国増加しており、LNG貿易に関与する国が年々増加していることがわかる。
まず輸出面で見ると、最大のLNG輸出国は中東のカタールであり、同国は昨年1年間で495億㎥を輸出、世界全体の輸出量の20%を占めている。これに続くのがマレーシアの295億㎥(シェア12%)、第3位がインドネシアの260億㎥(同11%)、第4位オーストラリア243億㎥(同10%)である。これら上位4カ国で世界のLNG輸出の53%を占めている。5位以下はアルジェリア209億㎥、トリニダード・トバゴ198億㎥、ナイジェリア160億㎥、エジプト128億㎥、オマーン116億㎥となっており、以上の10カ国が年間輸出量100億㎥を超える国である。そのほかにLNGを輸出している国々はブルネイ、UAE、ロシア、エクアトール・ギニア、ノルウェー、米国、リビア、イエメン及びベルギーがある。ロシアとイエメンは今回新たにLNG輸出国として登場した。なおベルギーはLNG製造設備を持っておらず、カタールから輸入したLNGをクウェイト等へスポットで再輸出したものである。(「国別LNG輸出量(2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-96bLngExport2009.xps参照)
次にLNGの輸入を国別で見ると、最大の輸入国は日本である(上図参照)。日本の2009年の輸入量は859億㎥で世界全体の35%を占めている。第2位は韓国の343億㎥(シェア14%)、第3位はスペイン270億㎥(シェア11%)であり、これら3カ国だけで世界のLNG輸入の6割に達する。3カ国に続くのが、フランス(131億㎥)、米国(128億㎥)、インド(126億㎥)、台湾(118億㎥)、英国(103億㎥)であり、以上8カ国が年間輸入量100億㎥を超えている。このほかLNGを輸入している国は、中国、ベルギー、トルコ、メキシコ、イタリア、ポルトガル、カナダ、アルゼンチン、クウェイト、プエルトリコ、ギリシャ、チリ、ドミニカ、ブラジルなどである。(「国別LNG輸入量(2009年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-3-97bLngImport2009.xps参照)
LNG貿易には輸出国におけるガス液化及び出荷設備の建設、LNG運搬船建造さらには輸入国におけるLNG受入設備および再ガス化設備の建設に巨額の投資が必要であるため、これまで普及のペースは遅かった。しかし天然ガスは石油や石炭に比べて環境負荷が低いとしてその評価が高まっており、また世界各国に出荷あるいは受入設備が次々と完成して、LNGのサプライ・チェーンが整備されつつある。LNG出荷設備の新設が輸入国の増加をもたらし、また受入設備の増強により、新たにLNG輸出に参入する国が生まれるなど、LNG貿易拡大の好循環が始まっている。これによってLNG貿易は今後安定的に拡大するものと思われる。さらに輸出入国の数が増えることにより、スポット市場も成長するため、今後国際的なLNG取引がますます盛んになることは間違いないであろう。
LNG貿易の拡大を1997年と2009年で比較すると、量的側面では1997年に1,113億㎥であった輸出入量は、2009年には2倍強の2,428億㎥に増加している。また輸出国の数は1997年には9カ国であったものが、2009年には2倍の18カ国に達している。1997年当時は国別輸出量ではインドネシアの357億㎥がもっとも多く、これに次ぐのがアルジェリア(243億㎥)、マレーシア(201億㎥)であり、この3カ国でLNG輸出全体の7割強を占めていた。カタールはこの年に始めて日本向けの輸出を開始したばかりであり、オーストラリア、ブルネイ、UAEの輸出量はカタールを上回っていた。
ところが2009年になると、上述の通りカタールが世界最大のLNG輸出国となり、97年に首位であったインドネシアは、マレーシアに次ぐ第3位となっている。また輸出国が多様化したため、全輸出量に占める割合も97年のインドネシアが全体の3分の1を占めていたのに対して、09年首位のカタールのシェアは20%にとどまっている(「LNG輸出の比較:1997年 vs 2009年http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-91bLngExport1997vs200.gif参照)。
同様のことを輸入面で比較すると、1997年にLNGを最も多く輸入したのは日本の643億㎥であり、全世界(1,113億㎥)の実に6割を占めていた。そして日本に次いで輸入量が多かったのは韓国(157億㎥)であり、続いてフランス(92億㎥)、スペイン(67億㎥)、台湾(41億㎥)であった。2009年の日本の輸入量は859億㎥であり世界輸入に占める割合は35%に低下している。この間、韓国は2.2倍に増加、スペインは4倍に増加してフランスを抜いて世界第3位の輸入国となっている。また97年には輸入実績の無かったインドが2009年には世界第6位のLNG輸入国となっている。(「LNG輸入の比較:1997年 vs 2009年http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-91cLngImport1997vs200.gif参照」。
(続く)
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