Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

銃声の快楽

2013-08-03 04:27:16 | コラム
ときどき観返したくなる映画のひとつに、長谷川和彦の『太陽を盗んだ男』(79)がある。

たったひとりで原子爆弾を作り上げる、中学教師の物語。
当然、被曝する。
そのことに気づきつつも、後戻り出来ない男を描いていて熱い。

完成度という点だけでいえば長谷川の前作、つまりデビュー作『青春の殺人者』(76)のほうが優れているとは思うのだが、『太陽を盗んだ男』には闇雲なエネルギーがある。充満している。

闇雲、いいねぇ。

ところで『太陽を盗んだ男』のDVDには特典映像として長谷川のインタビューなどが収録されていて、
曰く「米国の映画関係者のやつらに、こんなに面白い映画なのに、なぜあんなカーアクションや銃撃戦を入れたんだ? と突っ込まれた」

安っぽいというのである。
B級臭がするというのである。

実際はどうか。

確かに、いうとおりではある。
菅原文太がヘリから飛び降りるところは「無茶過ぎて」面白いのだが、そのほかのアクションは贔屓目で見ても出来がいいとはいえない。

筋が好きなのでそれさえも許せるが、たとえばカーアクションのシーンを『フレンチ・コネクション』(71)のように描けたら、さらに面白くなったのではないか、、、などと思うことはある。

同様に、銃声もそう。
長谷川は「敢えて効果音をつけた」といっているが、それが「しっかりと効果的」だったのかというと、ちょっと怪しい。


作品の方向性によるけれども・・・
銃声は、必ずしもリアルである必要はない。

殺陣における日本刀の効果音にもいえることで、
オーバーであったほうがいい場合も、そうでない場合もある。

そこで、映画における印象的な「銃」ではなく「銃声」を選出してみた。


監督のこだわりでもあるのだろうが、それ以上に、そんな監督の耳に適う「音」を探す/創ることをした音響効果マンを称える10傑―というわけ。


(1)『バレット・バレイ』(99…トップ画像)

銃がほしくてたまらない、だけれど、なかなか手に入れることが出来ない。
仕方なく、主人公は銃を自作する。

いよいよ引き金を引いたとき・・・。

自作だから、気の抜けた銃声こそ正解だったのだろう。

(2)『許されざる者』(92)

ひとに向けて銃を撃つことの恐怖と困難―そんな裏テーマが効いているからか、銃声のひとつひとつがズシンと響く。

(3)『ブルースチール』(90)

いまやオスカー監督となったキャスリン・ビグローによる演出、最もセクシーだったころのジェイミー・リー・カーティスが主演した「女警官と銃」の物語。

タイトルは銃の俗語として一部で用いられており、テーマそのものが銃であったりする。
よって、銃を捉えるカメラワークや銃声はこわだりにこだわりまくっている。

(4)『ソナチネ』(93)

ベネチア受賞作(最後の銃声)のほうがインパクトはあるが、武が「自信あり」と発しているとおり、リアリティを重視した音の設計は見事だったと思う。

とくに、エレベーターでの銃撃戦・・・だが、見つからなかったので、こっちを。




(5)『ヌードの夜』(93)

『バレット・バレイ』の主人公と同様、銃を手に入れることに「そーとー」難儀する。

だからこそ、手に入れたときの感動は大きいことだろう。

(6)『グッドフェローズ』(90)

みんな撃ちまくるが、トミー(ジョー・ペシ)が粛清されるシーンを挙げたい。

「Oh、No!!」と銃声が重なって、なんともいえない気持ちになる。

(7)『カノン』(98)

父親が娘を撃つ。

撃つ直前に「感受性を傷つける恐れのあるシーンです」なんていう警告テロップまで出して、完全にひとを喰ってはいるが、こっちは構えているつもりでも、撃った瞬間には「やっぱり」衝撃が走った。

(8)『ダーティハリー』(71)

イーストウッドから、もう一本。

実物を見たこともないマグナム44の「ガタイのよさ」と「あの銃声」を身近に感じるのは、このシリーズの存在あってこそ、だろう。

(9)『フェイス/オフ』(97)

ムチャクチャさでは香港時代のほうが上をいっていたが、
潤沢な制作費が手に入るようになったこの時代、火花や銃声といった細部にまで目が行き届くようになり、銃がひとごろしの道具であることを忘れてしまうほどの美しさを湛えている。

(10)『ディア・ハンター』(78)

切ない銃声という意味では、ベストワンかもしれない。

鹿を撃つライフルでの銃声も、己のこめかみを撃つロシアン・ルーレットの銃声も。

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明日のコラムは・・・

『脱、帽。』

コメント (2)
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