をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

「満ち足りた散歩者」

2006年11月09日 | 芝居小屋
満ち足りた散歩者」下北沢「劇」小劇場にて

塩野谷正幸という俳優がいる。10代の頃に知り、ずっと芝居を見続けてきた。何年か前から、プロデュース&出演の芝居を打つようになり、今回、久々の上演に出かけた。
作は佃典彦。この人の作品は非常にパワフルかつおもしろくてやがて悲しい。
今回も、ビルの屋上に暮らす2人の男たちを中心に、そこを訪れる人々の悲喜劇が描かれる。
特に塩野谷のシチュエーションが面白い。ビルの4階に入る金融会社に勤めていたらしいが、ドロップアウトして屋上に暮らしている。屋上には神社があり、そこに願をかけに来る人々の願いを、実際に遂行してあげる神様業=便利屋をやっている。
この男の表裏一体の男に直井おさむ。塩野谷とがっぷり組める役者で安定感があった。
出色は女性陣。まずは役所の緑化推進課の調査員。藤山直美の「顔」を思い出した。笑えるけど、えげつない笑いにならないところがいい。それからだんご屋の奥さん。賽銭箱から手が抜けなくなる場面が大笑い。この人はコメディーに徹した役を魅せてくれた。あとは美人系の不幸な女の典型や、ネコ探しの女性を演じた女優さんたちも良い。

今回の芝居はキャラクターが立っていて、役者もそれに応えている。
最期に「雨が降ってきた」という場面は、塩野谷の男の哀感漂う存在が、今までの浮かれ騒ぎを一転してハードボイルド系のラストに変え、雨の匂いを感じさせた。

ちなみにこの間ベニサンピットで演じていた役者さんや、ドラマや舞台で活躍中の女優さん、演劇もトライしている笑点出演中の落語家さんなどが、客席の方に来ていた。それだけ業界内の注目度は高いということか。
たった4日間しか上演されないのが惜しい芝居だ。

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