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紺青小鉢

ミニマムな和の空間で、日本の伝統文化を再発見

「バベルの塔」展

2017年04月25日 | 美術館・博物館
ブリューゲルの最高傑作《バベルの塔》が東京都美術館に!! 去年からずっと楽しみにしてました...今週末からあのGWも始まるので、大混雑する前に行かないとゆっくり見られませんし。と言いつつも、実は先週の開催初日に鑑賞済みでして。きょうで2回目の「バベルの塔」展。
14世紀末から16世紀末のネーデルラント(現在のベルギーとオランダに相当)は、油彩画誕生の地なんですが...なぜか彫刻から展示は始まります。しかしここにある彫像は彫りがリアル、それに彩色が残っているものもあります。始まりから心をつかむ展示構成。お次は宗教画や風景画、肖像画など。どれも色彩が鮮やかで服飾の表現が細かい。おまけに傷みやすくて貴重な作品ばかりなんでしょうね...ここのフロアは照明かなり暗いのでご注意を。
この展覧会の裏ドラ的な存在のヒエロニムス・ボス。油彩画2点は初来日です。卑猥な格好のモンスター大集合!? 幻想的な世界観に心惹かれるボスの版画ですが、そのほとんどがボスの模倣で作者不詳。グロで気色悪くて(同じ意味か)キモカワイイ。それらモンスターを単眼鏡で探す楽しみ。細かいとこまで見えてしまうと思わずニヤけ顔。
ピーテル・ブリューゲルも版画から始まりますが、こちらもボスチックなモンスターだらけ。ここまで描き込まれているとだんだん目がパチクリしてきます。まあ面白いから良いんですけど。
エスカレーターを上がってブリューゲルの最高傑作《バベルの塔》が展示してあるフロアへ。螺旋状の外廊が大きく描かれた間仕切りが高揚感を増します。漆喰やレンガを釣り上げる建築現場など、細部の説明パネルを見ながらいよいよ《バベルの塔》の前に立ちます。
重厚感のある佇まい。低層部のレンガの古さに比べて、上層部は赤々としたレンガが目立つ外観。建設に携わる作業者の姿はあまりにも小さく、どのように描いたのか疑問が湧きます。漆喰を釣り上げる作業員は、なぜか全身真っ白な姿。一方レンガの側は赤い煙みたいなものに包まれて、こちらも職場環境は良いとは言えず。港には停泊中の船舶が何十隻も。背景も手抜きひとつない緻密な描写に驚愕。未だ建設途中のバベルの塔、神の領域に近づこうとする人間の行く末はいかに...。

大英自然史博物館展

2017年04月22日 | 美術館・博物館
いつかの深海展、その辺りから特別展で写真撮影可が始まったような...いま国立科学博物館で開催されている特別展もそのひとつ。控えめな照明が原因かはたまたカメラ性能の低さか、もしや撮影者の腕が悪いだけか...撮ってもピンボケ連発の大英自然史博物館展です。
大英博物館の元となったハンス・スローン卿のコレクション。その収蔵品が源流となって大英自然史博物館は設立されました。世界中から集められた博物学標本、その膨大なコレクションの中から厳選された自然界の至宝が上野の地へ。英国人でさえも滅多に見ることができないモノばかりのようで...それが写真撮影可なんですからアガリます。



1億4700万年前の始祖鳥。上野で見られるのが奇跡。



海洋調査船チャレンジャー号の航海で採集された海底の堆積物。



日本の標本もあります。タカアシガニ。



でかい塊の輝安鉱。



昆虫がきれい。まるで宝石箱のよう。



1万2000年前のサーベルタイガー。



迫力ありすぎなトラ。

写真を撮るとそれだけで満足してしまい、はい次!次!という感じになるのは仕方ないかと。ダーウィンの『種の起源』手書きの原稿などはチラ見程度ですっ飛ばしてしまいました。あれ超貴重なものですよね...今度はじっくり見てみようと思います。ちなみに昆虫類は小さなものが多いので単眼鏡持参で。

茶碗の中の宇宙

2017年03月24日 | 美術館・博物館
薄暗い展示室。ガラスケースに収められた黒樂茶碗。この暗さはあの「待庵」の茶室のよう。ほのかな灯りに照らされた地肌。コポコポと湯の沸く音...。え、これで飲んでいいんですか!?(妄想)。
千利休が長次郎という男に作らせたのが始まりの樂焼。初代長次郎から続く樂家歴代の樂茶碗が一堂に揃う「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」展が、東京国立近代美術館で行われています。
薄暗い茶室の中でじっと黒樂茶碗に向き合う。手のひらで包み込んでみる...抹茶が入っていたらどんなにか。いろいろ想像するのが楽しいかと。ロクロじゃなくて手びねりだっていうのは聞いてましたが、それ以外はあまりよくわからない樂茶碗。来月には上野でも「茶の湯」展が開催されるので、この樂焼もぜひ見ておきたいと思いまして。
やはり初代長次郎の素朴な造形が好きですかね...赤樂茶碗や黒樂茶碗の銘『禿(かぶろ)』などが。二代常慶の獅子香炉は顔のつくりが面白い。三代道入の銘『青山』は淡い黄色のワンポイントが効いている作品。時代をずっと飛びまして、十四代覚入の赤樂茶碗銘『杉木立』のモダニズムにはシビれました。覚入から作風が大きく転換したような気もします。
粘土の表面を削る荒々しい造形の十五代吉左衞門。鮮やかな釉薬で色付けされた樂茶碗は、まるで鉱石の輝きを宿しているかのよう。革新的な作品がある一方で、フランスで焼いたというフランスRAKU茶碗もおしゃれ。
図録売ってますけど、5月に愛蔵版の図録も書店で発売されるようで。そっちの方が気になります。

シャセリオー展

2017年03月11日 | 美術館・博物館
モネとかゴッホとか万人受けしそうな展覧会を催す東京都美術館。それを横目に国立西洋美術館はと言うと...誰でしょか的なマイナー路線で、知る人ぞ知る人たちを喜ばす美術展を開いているように思えます。2年くらい前に開催されたグエルチーノも知りませんでしたし、その前のホドラーも然り。つい先日のクラーナハもそうですかね。ちなみに自分は知る人ぞの中には含まれていません。
まるで競走馬の名前みたいなシャセリオー。カリブ海のイスパニョーラ島(現ドミニカ共和国)生まれ。フランスに帰国後はアングルの弟子となり画家の道へ...。ロマン主義の異才と讃えられるテオドール・シャセリオーの展覧会、さてどんな作品がありますことか。
青い空に逞しいカラダが映える《黒人男性像の習作》、《岩に座るナポリの若い漁師》の素朴さが個人的に好み。《サッフォー》の夕暮れから夜へと続く重苦しさの表現はなかなか。肖像画もいいもの揃ってます。《ドサージュの肖像》とかカッコイイ。
シャセリオーの作品だけでなく、影響を受けた画家たちの作品も展示されています。ギュスターヴ・モローの作品がちょいちょい挟まれるのが楽しみ。《牢獄のサロメ》、《若者と死》など。
アルジェリアを旅したシャセリオー。オリエンタルな雰囲気漂う作品にも心惹かれるものばかり。色鮮やかな民族衣装や目ヂカラ鋭いユダヤの女子。なぜか馬のひとみがキュートすぎ。
道半ばで早逝したシャセリオー。その芸術は世紀末の象徴主義へと受け継がれました。

わが永遠の魂

2017年02月24日 | 美術館・博物館
前衛芸術家、草間彌生の展覧会が、国立新美術館で開催されています。草間彌生さんの作品というと、瀬戸内海の何とか島にあるかぼちゃのオブジェとか、水玉模様が思い浮かぶんですけど、実際にこの目で作品を見たのはたった1回しかありません。ですので今回はかなり楽しみにしてきました。
企画展示室入口からほんの数歩でYAYOIワールドは炸裂しました。まるで体育館のような広さの展示室、その壁一面に飾られた正方形の作品群『わが永遠の魂』に囲まれる鑑賞者。抽象具象さまざまな形のモノが描かれた真四角の世界。色の鮮やかさに圧倒され、色の叫びに耳を塞ぎたくなるくらい。これが現在まで制作され続けているという絵画作品ですか...これでほんの一部。ちなみにこれ携帯orスマホで撮影可とのことです。デジカメじゃダメなんですかね〜。
次の展示室には初期作品がいろいろ。岩絵具や油彩、インクで描かれたどことなく暗い絵ばかり。さっきの色の洪水に麻痺した頭にはいいクールダウンかと。個人的には好きな作風です。
ニューヨーク時代の作品、No.シリーズなんかは大きなキャンバスに向かって一心不乱に筆を動かす。その行動が心のドレインにつながっていたんでしょうか。
アメリカから帰国後の作品は、コラージュものに興味を惹かれました。それになぜかフクロウ多し。あと気になったのが『よみがえる魂』というアクリル絵具で制作された作品ですけど...あれに描かれた水玉はもしや手書きですか!? だとしたらヤバすぎです。筆の先から執念というか、それに近いものをキャンバスの中に封じ込めているような...そんな凄まじさが存在しているようで。
真っ暗な部屋の中にあるのが『生命の輝きに満ちて』の作品。これが一番びっくりしました。



展示室の外にも南瓜!! けっこうデカイ。

超・日本刀入門

2017年01月27日 | 美術館・博物館
二子玉がずいぶん様変わりしてるんですけど。でも高島屋は以前のまま。和菓子屋が角っこにある商店街もそのまま。静嘉堂文庫はどこだっけ...こんな道を通った覚えなし。
数年前に曜変天目を見に行った時にも、分かりにくい場所にあるな〜と思った静嘉堂文庫美術館。そこではいま「超・日本刀入門」展が開催されています。
刀とかまあ嫌いではありません。むしろ好きなほうですが、ここ何年か刀剣女子なるものあり...便乗するのもどうかと思って、ちょい引き気味の立ち位置にいたんですけど、つい先日「春日大社 千年の至宝」展を見に行った時、奉納された武具のひとつ『菱作打刀』に引き込まれてしまいまして...。そこで図ったかのような「超・日本刀入門」展の開催。まんまと行くハメに相成りました。
静嘉堂文庫が所蔵する国宝1件、重要文化財8件を含む30振の刀剣が揃う展示室に入る前に、刀の見どころを解説するパネルでお勉強。焼入れの模様である刃文を見るために、自分で腰を曲げて姿勢を低くするとか、いろいろ日本刀鑑賞のポイントがあるようです。刀の各部名称や刃文の種類、地がねの見どころなどもイラストで説明。普通ならこんなに丁寧なパネルなんてありませんからね...まさに入門者のための展覧会。
研ぎ澄まされた刀身の肌。そこに広がる刃文は夜空のよう。ぜひ単眼鏡持参でお願いします。

芸術の起源

2016年12月17日 | 美術館・博物館
暗闇に浮かび上がる動物の群れ。巨大な牝ウシに圧倒される。細かなところまで丁寧に描くその技。2万年前の彩色がいま上野の地で...国立科学博物館で開催中の「世界遺産 ラスコー展」です。
フランス南西部、ボルドーにほど近い場所にあるラスコー洞窟。およそ2万年前にクロマニョン人によって描かれたラスコーの壁画は、いまでは閉鎖されて見ることができません。この展覧会ではラスコーの壁画を実物大で復元展示しています。
洞窟に入る前のコーナーでは、壁画が発見された当時の様子や、見物客が押し寄せる図などを展示。なかでも洞窟内に残されていた『ラスコーのランプ』なるものが、フランスでは国宝級の出土品だとか。ちなみに壁画制作に使われた顔料は世界初公開とのこと。それではラスコー洞窟の中へ...。
走る音が響いてきそうな馬や牛の姿。細かく彫られた線画がブラックライトで浮かび上がります。空気もひんやり感じられそうな洞窟内。そこには2万年の時を超えた神秘的な空間が広がっていました。
クロマニョン人は道具の先っちょに何か動物の姿を彫刻したり...それは芸術の始まりでもあります。これ以前は「別にそんなことやらなくていいだろう〜」的な考えだったんですかね(考えがあったかどうか微妙ですけど)。毛並みが表現されたバイソンの彫刻は、まるで江戸時代の根付のよう。他にもトナカイの角から槍先を削り出す様子や、縫い針の作り方などジ〜ッと見入ってしまう映像も多い。『ラスコーのランプ』のくぼんだ丸型のつくり込みは凝りすぎです。2万年前にこんな凝り性の人がいたなんて...。

endless 山田正亮の絵画

2016年12月13日 | 美術館・博物館
会場の壁面に掛けられたストライプの数々。同じように見えるけど色の重ね具合でだいぶ印象が変わる。近寄れば絵の具の垂れた跡も生々しく、画家の気迫がそこに在るかのよう。東京国立近代美術館で開催中の「endless 山田正亮の絵画」展です。
何年か前に買った絵はがきが、この特徴的なシマシマ模様。その時は絵柄が気に入って買ったものですから、誰の作品だかは存じません。この展覧会のチラシを見て、あ〜あの絵はがきの人かと思い出しました。そのストライプが始まる前は静物画を描いていますが、なんとなくモランディのよう...几帳面っぽい芽が出始め。
作品の変遷というコーナーが興味深い。画風の変化みたいなのがパッと見でわかる仕掛け。壁のお言葉が心に染みます。制作ノートも達筆すぎてあまり読めませんけど。色の洪水とシマシマばかりで目がどうかなっちゃいそうな展覧会。目薬持参でお願いします。



山田正亮の絵画のあとは所蔵作品展「MOMATコレクション」を鑑賞。岸田劉生と河原温のコーナーがありました。日付のやつは残念なことに写真不可!! 企画展『瑛九1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす』が、はじめよくわかりませんでしたが、若き芸術家の苦悩を作品と手紙でたどる展示のようです。で、その手紙が読んでいると面白い。ぐだぐだ文句たれてんのとか、ビール飲ませろとか...展示してあるの全部読んでしまいました。

ゴッホとゴーギャン展

2016年10月14日 | 美術館・博物館
まだ開幕して間もないからか、待ち時間もなくゆっくり見られました。東京都美術館で開催中のゴッホとゴーギャン展。先日行ったデトロイト美術館展にもゴッホの作品ありましたけど、こちらの方が展示数多いので良いかと。
南仏アルルで共同生活を送ったゴッホとゴーギャン。性格も芸術性も違うこの二人、初めは良かったんですが、だんだん激論。プチプチプチの末...果ては耳切り事件まで勃発!! ゴーギャンは逃げるようにしてパリに舞い戻ります。ゴッホの夢見た共同生活はたったの2か月で終了しましたが、それでもお互い刺激を与えあったはずで...。その後ゴーギャンはタヒチに渡り、二度とゴッホに会うことはありませんでした。
ゴッホの《古い教会の塔、ニューネン(「農民の墓地」)》、《パイプをくわえた自画像》、《靴》の重々しい色彩がゴッホらしくて好み。《石膏トルソ(女)》も良い。
ゴーギャンの《肘掛け椅子のひまわり》は心に響くものがあります。在りし日のゴッホを思いながら。

デトロイト美術館展

2016年10月11日 | 美術館・博物館
ここ最近は写真撮影ができる美術展が多いような気がします。上野の森美術館で開催されているデトロイト美術館展もそのひとつ(毎週月火のみ)。モネやルノワール、ゴッホなど有名どころの名画が撮影できるとあって、あちこちでカシャカシャという音が聞こえます。すべての作品が撮影可能となっていますが、一部の作品だけはSNSなどの拡散が禁止されていますのでご注意を。
気に入ったものだけ何枚か撮るっていう楽しみ方なら、まあ良いんじゃないでしょうか。一枚一枚ぜんぶ撮っているのとかそういうのはなんだかな〜と思いました。レンズ(スマホ画面)越しでしか名画を見ていない状態はどうなんでしょ。撮影ができない日にあらためて来た方が、作品とじっくり向き合えるかもしれません。
セザンヌの《三つの髑髏》、モディリアーニの肖像画が好み。