読書おぶろぐ

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海賊とよばれた男(上下)

2015年10月10日 21時13分28秒 | 人物伝、評伝 (自伝含)

百田 尚樹氏の著書。 

出光興産を築いた出光 佐三氏をモデルにした小説。 読み終はつたが、ここにある出光の
歴史を忠実に再現してゐるやうに思ふ。 http://www.idemitsu.co.jp/100year/

「国岡鐡造」といふ実在の人物を通してみる日本の近代史と鐡造と彼を取り巻く人々の人物史。
近代史、といふか第一次世界大戦から第二次世界大戦、そして好景気に沸く日本経済に
起きてゐた陰の部分、中東戦争による「オイルシヨツク」とすごく勉強になる事が書かれてゐた。

是非とも一読をお勧めする。

今安保法案をめぐり戦争反対だのやつてゐるが上巻を読むと、軍が力を持つとどれだけバランスが崩れて
統率が乱れるかよくわかる。しかし現在の状態と当時の軍が出てくる状態は比べ物にならない状況であらう。

ゐたづらに戦争を煽り、日本の防衛に必要な法案を邪魔するのはいかがなものか。

そして戦況が苦しいにも関らず現実をひた隠しにして軍部に加担してゐた当時のマスゴミの姿は現在真の
歴史を隠蔽し、日本といふ国家の為になることをひた隠しにし反日に加担してゐる姿に置き変つただけであり、
恥を知るべきである。

そしてこの頃から台頭してゐた「組織の為の組織」といふ官僚発想。これが日本の邪魔をして敗戦を導いたの
ではとも思へるが、未だに日本をダメにし国民に負担をかけてゐるのはこの「組織の為の組織」の官僚思考である。

この官僚のバカな思考は、下巻にも描かれてゐる。そして今もこの発想は続けられ日本の行く末を邪魔して
ゐる一因となつてゐることもあるのであらう。

下巻の終わりごろに興味深い逸話が出てくる。

オイルショツクで某新聞のインタビュウを受けた鐡造はかう答へる。

「今度の石油危機は、日本国民にとつては天の下された試練と言えるのではないかと思つてゐる。
国民は享楽に慣れきって節約を忘れてしまった。そこで天がモノを大切にせよと反省の機会を
与えたのではないか」 (P347-348)

4年前の天災でおなぢ事を言つた人がゐた。ものすごい批判を浴びたが、まるでおなぢ事が起きてゐたやうだ。
そして、次の言葉もこの天災に於いて日本人が行つた事を表してゐるかのやうだ。

「しかし、さすがは日本人だ。既に国民は緊張し、電力の節約などで積極的に政府の方針に協力して
いる。戦後、国民が自分を捨て一致団結して、国や社会のために尽くすといふことがこんなにはっきり
した形で表れたことはない。この姿を取戻せたなら、石油危機も意味があったと思う」

これは、震災後電力節約として掲げた目標を大幅に上回り世界から驚嘆の言葉を浴びた日本人と
おなぢではないか。

日本人は、これが当然と思つて行動してゐるが、実はさうではないらしいのである。

ここを読んだ時に、「日本人とはどんな民族なのか」を認識してしまつた。

更に読むと、オイルシヨツクで「現実に石油がないと、生活に支障が出ます。例えばガソリンが
足りないと -」

の記者の言葉に対し
「ガソリンがなければ、車に乗らないで歩けばいい、足はそのためにある。灯油が足りなくて
ストーブが使えなければ外套を着ればいい。終戦後は長い間、冬は事務所でも外套を着ながら
仕事をしてゐる人がいくらでもゐた。

終戦直後の数年間の苦しみは、こんなものではなかった。あれを経験したものにとっては、
今度の石油危機などどうということはない。確かに、今後、インフレも起きるだらう。しかし経済と
いうものは数年周期で好不況がめぐってくる。

今度のはそれが少しばかり大きいだけの話だ。それでも戦争に比べれば、何ほどのことはない。
何、この騒ぎもまもなくおさまる。一番大事なのことは日本人の誇りと自信を失わないこと。それ
さえ失くさなければ、何も怖れることはない」 (P348)

なんだか、この言葉は震災から今にゐたる日本人論を聞いてゐるやうではないか?

便利に慣れるとそれを失ふのが怖い。しかし、一度失つてしまつた時、原点に返ればいくらでも
やり直しはできるのだ

そんな事に気づかずにあれこれ心配して、自己保身を一人ひとりがし始めると、大きな利益を
失ひさうだ

この主人公は、自己利益よりももつと大きな、「日本といふ国」をひたすら考へて行動をしてきた
人である。

ゆへに、他社や外資や政府さへも「敵」にしてきた人である。 潰されても仕方がない状況であつたが
なぜか

助けてくれる人が要所要所で現れるのである。 これも不思議なところで、神の手の内で皆が
動いてゐるのではないか、そしてこの人を教訓にして生きよといふ神の教示ではないかと
思はれることが多くあり

読みながら感動して、読み進めないことしばし・・・・

自分よりも国の事、他人のことを考へて行動すべし・・・ 見返りを求めるな・・・・といふ
教へを乞ふたやうだつた。

散々官僚独特の発想で自己利益を追求してきた人間らは、これを読んで少し反省し
今やつてゐる日本国民の不利益になることを止めるべきだ。 

日本近海に、資源が眠つてゐることが報道されてしばし経つ。
この資源を自己利益のためでなく、出光 佐三氏のやうに「日本国民」のために使ふことを
第一に国も企業も考へるべきだ。

是非映画になつてほしい。 主人公は歌舞伎役者に演じてほしい。

中村 吉右衛門丈が、適任ではないかと個人的に思ふ・・・ 



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