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天網 TOKAGE 特殊遊撃捜査隊 2

2011年08月23日 15時30分35秒 | ミステリー・推理

今野 敏氏の作品。 TOKAGEシリイズ第二弾。

新宿駅のバスタアミナルを出発した名古屋行きのバスが、ジヤツクされたと言ふ一報が入る。その数分後、東静岡行きのバスジヤツクの連絡が入る。第一報が誤報かと思へば、実はバス2台がジヤツクされてゐた。すぐ後に、東京駅を出発した名古屋行きのバスがジヤツクされたといふ連絡が入る。つまり、3台のバスがジヤツクされたのであつた。 犯人からの連絡はなく、バスの位置もつかめない。犯人の目的は何か・・・?

インタアネツトが普及した現在、PCや携帯等情報伝達ツウルを使いこなし、その知識が無いと「犯罪についていけない」事態となつてゐる。足で動き回ることよりも、情報をツウルを使用して収集するはうが重要なのか?

そんな警察と新聞記者の嘆きのやうな場面がある。 若い者はどこでもそのツウルを抵抗なく使用するが、年配の警察官や新聞記者には追いつけないところがあり、聞き込みをしても得る答えに自分の理解がついていかない・・・・

この作品はそんな一面を表してゐる。同時に、犯罪を「ネツト中継」するやうなことも実際起きかねない・・・ そんなこれからの懸念も描かれてゐる作品である。 

自分の飲酒運転、カンニング、賭博等「犯罪」とされることを自らネツト(ブログ、ツイツタア)に書き込む人たちがゐる。その人たちは、驚くほどに罪の意識がないし同時に自分の個人情報を惜しげもなくさらし、個人情報に関する警戒心も無い。

片や、ネツトユウザアの中には書き込んだ人のIPアドレスから所在地を割り出し、個人の居住住所を割り出す人もゐる。見つけた情報がネツトに書き込まれることも少なくない・・・

「情報社会」のかのやうな一面がどんな犯罪を引き起こすのか・・・? それを描いたのが本書だと思ふ。

この作品は、TOKAGEといふオオトバイによる偵察専門の特捜班を取り上げながら、特捜班と捜査班の警察の仕事を描き、これから頻発すると思はれる「ネツト犯罪」を取り上げてゐる。

その中で、やはり「人間」が面白い。 ネツトの知識が全く無い記者、しかし記者としての実績と必要な勘はそなえてゐると自負する記者と新卒の「記者としてのセンス」がまるで無いと思はれるのにネツトに関する知識が豊富で「歩き回る」よりも情報を収集してしまふ若者。 この作品ではこの記者の人間の読みどころがまず一つ。

次はTOKAGE隊の「若手」上野がこれまで隊長に付いてゐたが、今回の事件で「リイダア」を指示される。 部下についたTOKAGEは二人とも上野よりも年長で捜査経験も長い。実戦でどんどん動いていく・・・・ 「隊長なのに、部下に指示を出せず」落ち込む上野。その心理も描かれ、働き始めて一人で何かしだすとこんな気持ちになるよな・・・と思ふ心理描写がある。

そして今野氏の警察作品には、必ず女性が出てきてリイダアだつたり、なんらかの技官であつたりして「男の中で役割を担つてゐる」。そして、男ばかりのなかで女に対する偏見や負の感情が的確に書かれてゐることも注目してゐる。 

今野氏はかのやうな場面に実際に目にして、憤り(?)のやうな感情を抱いたことがあるのだらうか? レコオド会社に勤められてゐた時にそのやうな場面はあつたかもしれないが、かなり状況描写が現実的だ。 

優秀な女社員(捜査員)がゐると、「敵はない」と能力に嫉妬を感ぢた男がだう陰険陰湿になるかを把握してゐるのと同時に優秀な部下を性別問はず信頼する男、戸惑いながらも男の部下と同ぢやうに接しやうと四苦八苦する男、先輩として若干の恋愛感情を抱きつつ憧れる男など、いろいろ描かれてゐる・・・

面白い小説は、人間が面白く描かれてゐるが作者の観察眼の鋭さも否定できない。



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