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朝日新聞の危機と「調査報道」 原発事故取材の失態

2013年03月08日 15時33分37秒 | 社会・報道・警察・教育

谷 久光氏の著書。

谷氏は1934年生まれ、57年学習院大学政経学部卒、同年朝日新聞社入社。名古屋スタートで社会部畑を歩き、東京社会部次長、名古屋社会部次長、東京企画報道室長、企画総務、編集委員などを歴任。退職後は03年まで故平山郁夫氏が主宰する(財)文化財保護侵攻財団専務理事の経歴をお持ちで現在は日本記者クラブ会員。

本書は朝日新聞記者OBが福島原発事故の際の「大手新聞社の報道の姿勢」に疑問を持ち、その疑問と自分達が現役の時に行なつてゐた「調査報道」の状態を一冊の本にまとめたものである。

「プロローグ」、および「第一部 朝日新聞にみる存亡の危機」では、記者クラブの「発表報道」にすつかりと「慣れて」しまつた現在の記者らが現地に潜入取材をせず、危険区域には立ち入らず、東電他の発表に従って記事を「書いた」ことに対し、フリイの記者は原発作業員となつて潜入し本を出版したりしてゐる対照的な取材姿勢を書き、大手新聞社の「堕落?」を嘆いてゐるやうに見えた。

フリイの記者の書いた本も読んだ。谷氏が指すのはきつと、この本であらう ヤクザと原発 福島第一潜入記 http://blog.goo.ne.jp/liebe-kdino-schumi/e/842b989bda5d20e76b79e70717eea45d 

また、それ以前に記者クラブといふものがどういふ団体でフリイの記者や外国メディアといふ「よそ者」に対してどんな対応を取るのかも本で読んでゐた。
記者クラブ 情報カルテル http://blog.goo.ne.jp/liebe-kdino-schumi/e/4eac92c98c38d4442415e4d293a0f398
記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争  ジャーナリズム崩壊  新聞が面白くない理由

なので、この第一部で谷氏が記者クラブに在籍する記者と記者クラブに在籍を拒否されてゐるフリイの記者のかき分けは理解できた。フリイの記者からは、大手の「会社員」記者クラブ員は結構辛辣な目でみられてゐるやうである。

谷氏は記者クラブの記者の対応とフリイの記者の対応を見比べ、「存亡の危機」を感じられてゐる。 個人的に言ふと、前から思つてゐた「新聞取る意味あるのかな~」といふ状態が書いてある。

そして、谷氏は「第二部 よみがえれ、調査報道」として過去自分達やその先輩が一本の情報提供の電話により、いかに多くの情報を集め世間を動かし、様々な賞を受賞したのかを書いてゐる。

第二部の最後は、その調査報道を行い各賞を受賞した人達との座談会となつており、ネツトに対するコメントもあつたが。

正直、なんかがつかりした。

以前、「朝日が取り上げなければ記事ではない」とか「朝日が天下を動かしてゐるんだ」と朝日の記者が本気でさう信じて発言してゐるといふのを聞いたことがあつたが、この座談会がまさにその雰囲気だつた。

第一部でフリイに記事を抜かれ状態になつてゐる、現状の自社の記者の反省とか改善は全くなく、他の媒体もそうだとかテレビはもつと酷いとか言つてゐる。ネツトが出たら取材にもいかないでネツトの記事で書いてゐる記者もゐるとかの話もある。

でも、最後はネツト媒体は記者を持つてゐないから新聞記者がとくダネを書かないと言論が死ぬ、といふ意味不明の結論になつてゐた。

これは結局、ネツトだらうがそんなのはフリイと同じと思つてゐるのか? 大本営の発表通りにしか書いてない現在の自社の記者のことは何もなく、「昔取った杵柄」で自慢してゐるやうな感じがした。

これが朝日新聞の体質か・・・・・ なら慰安婦ねつ造キヤンペインといふ、ありもしないことを調査報道しないでキヤンペイン記事を発行するとはだういふことは何なのか?

調査報道を掲げてゐる限り、恥ではないのか?



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