千一夜第3章第109夜 最近の読書12

2018-06-09 20:01:20 | 読書

2018.6.9(土)

最近読んだ本。記載するのは今回で12回目、評価を付けるのも気が引けるが、最も面白く読んだものは☆5つである。

ここ数年、嘗て読んだ本を二度買いすることがある。記憶力の低下もあるが、ここ数年は読書する時にブックカバーを付けたまま読んでいるので、本の表紙や裏表紙の装丁などを見ていないせいもある。20年くらい前までは、読書一覧表を作者別に作成していたが、それ以降は作成していないので解らなくなってしまったし、以前、大工さんに頼んで部屋の周囲に天井から床まで本棚を作ってもらい著者順に並べていたが、それにも収容しきれなくなって近年では読了順に積み上げているせいもある。そろそろリサイクル屋さんにて整理しなければならないかなと思う。

『漁師町ぶらり 釣り人目線の魚と食の旅50』 西潟正人著 講談社+α新書 評価☆☆☆☆ ’18年4月19日読了
寸評:CSスカパーTVの旅チャンネル「漁師町ぶらり」で全国を行脚しながらの行き当たりばったりのレポート集である。著者の数百漁港のぶらり旅で記憶に残った50港を紹介している。海岸線の旅は踏破することが目的では無く、日々の出会いを喜びとするところにあるようだ。大漁でも不漁でも人々は生きているわけで、漁師町があるかぎりぶらり旅は永遠に続くのである。本書では港の歴史や触れ合い、伝統漁法、獲れる魚、魚料理の紹介、また料理方法や料理指南などもあり、後は漁師のぼそぼそとした語り口を聞く。目線が魚と対等であるから魚の気持ちでものを言うことだってあるようだ。

『アガワ随筆傑作選 「聞く力」文庫2』 阿川佐和子著 文春文庫 評価☆☆☆☆ ’18年4月20日読了
寸評:著者の数多の随筆集からチョイスした50編である。著者のエッセイは殆ど読んでいるので、一度は読んだものばかりであるはずだが、忘れているものが殆どだった。赤ん坊の頃からのエッセイであるが、私がまず驚くのは著者の記憶力の凄さである。私は幼児期の記憶は多少はあるが、赤ん坊の頃の記憶は皆無である。私の友人知人の中にも記憶力の凄いのが2~3人はいるが、彼ら彼女らが中学高校時代のことを話すが、私には殆ど身に覚えの無いことばかりである。記憶力が良くなければエッセイなども書けないのだろうなと思う。著者とは年齢もほぼ同じなのでエッセイを読むと、そうそう、あんなこともあったなあ、こんな物もあったなあと想い出させてくれる。またエッセイなので阿川家のことがふんだんに溢れ出ていて面白い。

『ボックス!』(上)(下) 百田尚樹著 太田出版 評価☆☆☆☆ ’18年4月27日読了
寸評:高校生の少年たちの友情を感動的に描き出したスポーツ青春小説である。主人公はボクシングに関しては天性の才能の持ち主であるが、副主人公のボクシングを始める動機は、イジメられ続け喧嘩に強くなりたいという納得できるものである。高校生活3年間の物語で、最終的に大成するのは副主人公の方である。この小説でアマチュア・ボクシングのルールを初めて知った。危険を伴うスポーツなのでプロとは随分違う。見た目、こっちの勝ちだろうと思っても、判定では逆の方の勝ちになることも多いようだ。判定までいくと相手からダウンを取っていても、アマ・ボクシングでは有効な手数の多い方の勝ちとなるのだ。理不尽な判定のようだがこれがアマ・ボクシングである。監督、顧問、マネージャー、部員等が絡み合って面白く展開する。

『歴代総理の通信簿』 八幡和郎著 PHP文庫 評価☆☆☆☆ ’18年5月8日読了
寸評:大政奉還から王政復古までの2か月は幕藩体制のまま、王政復古の大号令が出され総裁・議定・参与制となる。この時の総裁が有栖川熾仁親王であり形式上の初代宰相は熾仁親王である。その後、三条実美と岩倉具視の輔相制となりさらに太政官制へと移行、そして内閣制度となるが、本書では伊藤博文から安倍晋三(第2次)まで62人の宰相の履歴書を綴り業績評価をしたもの。但し、この評価は政治家としての全人物像からではなく首相在任中のことに限っての評価である。どんな立派な人物だったとか、大臣として立派なことをしたとか、退陣後に活躍したとかは関係ない。そして締めとして、明治憲法の制定により立憲主義政体を実現して以来、民主主義の先進国だったはずの日本だが、三権分立、二院制、地方分権といった多元的民主主義の今日の停滞を嘆く。

『コンビニの買ってはいけない食品、買ってもいい食品』 渡辺雄二著 だいわ文庫 評価☆☆☆☆☆ ’18年5月9日読了
寸評:買ってはいけない食品とは、発がん性があったり催奇形性など危険性の高い添加物を含む食品となる。保存料や有機酸調味料、発色剤、着色料、増粘多糖類、過酸化脂質、酸化防止剤、甘味料、漂白剤など合成添加物の大半は有害なものである。具体的に商品名も挙げて有害添加物を指摘しているが、その殆どは我々が日々口にしているものである。これではコンビニ行っても買える物が無くなる。それに対して、コンビニブランド物はセブンイレブンやローソンについては、できるだけ添加物を少なくしているのが特徴でまずまず安全と言えるようだ。添加物表示の見方もマスターしたので今後は良く見ることにする。4時間で読了。

『呪縛 金融腐蝕列島Ⅱ』(上)(下) 高杉良著 徳間文庫 評価☆☆☆☆☆ ’18年5月16日読了
寸評:高杉作品は徹底した取材力にあるから面白い。金融機関が不良債権の山を抱えてのたうつ原因となったのが、バブルによる日本経済の崩壊である。腐蝕したのは銀行、証券、生保などの金融界だけでなく、経済界も産業界も、そして政界、官界も、日本全体が腐蝕、堕落振りも凄まじかった。本書にも登場する大蔵官僚接待の場としての「ノーパンしゃぶしゃぶ」はその象徴であろう。本書のあらすじは、ACB銀行による総会屋への巨額融資、反社会的勢力との癒着などにより銀行幹部7人が逮捕される。銀行再生のために中堅社員4人が立ち上がり新執行部作りに奔走し成し遂げるが・・・・。上下巻1200頁余りを一気に読み切る。

『グラスホッパー』 伊坂幸太郎著 角川文庫 評価☆☆☆☆☆ ’18年5月18日読了
寸評:正統のハードボイルド、殺し屋小説である。主人公は妻を故意に轢き殺した男への復讐のため、中学教師を辞め犯人の父親が経営する非合法な手段で金を稼ぐ会社に派遣社員として就業する。そして復讐の機会を待ったが、妻を殺した男は押し屋と呼ばれる他の殺し屋に殺害される。主人公はその殺し屋の正体を探るため後を追う。一方、自殺専門の殺し屋、ナイフ使いの殺し屋も押し屋を追い始める。3人の殺し屋をそれぞれ主人公のように仕立て(キャラクター主導の小説のよう)、それぞれの思惑の元に3つの物語が進行していくが、3人がある場所に集まり物語は一気に展開していく。ハードボイルド、推理小説には良くある手法だが、知らず知らずのうちに計算しつくされた物語に引き込まれていく。

『日本会議の正体』 青木理著 平凡社新書 評価☆☆☆☆☆ ’18年5月22日読了
寸評:以前読んだ日本会議の本は安倍政権との繋がりについて書かれていたが、この本では日本会議の成立過程から現在(H16)に至るまでのプロセスや活動内容を詳細に記載している。日本会議に否定的な著者が書いているところも良い。同会議は右派活動団体である谷口雅春氏(故人)主催の生長の家の学生組織「生学連」を母体として「全国学協」「日本青年協議会」「日本協議会」へと発展し、神社庁本庁を頂点とした神道の宗教団体、伊勢神宮、明治神宮などと結びつき民族派の国民運動として活動している。所謂大元は生長の家と明治神宮の二本柱で支えられ、「日本を守る会」「日本を守る国民会議」と合流して日本会議が結成されたのである。所属国会議員は’15年9月時点で281人である。神社本庁も「神道政治連盟」を結成し国会議員304人が参加している。安倍首相を始めとして多くの閣僚が両団体に参加しており、政策も現政権に沿ったものとなっている。正に安倍政権の大応援団であると言っても過言ではあるまい。

『ちゃれんじ?』 東野圭吾著 角川文庫 評価☆☆☆☆ ’18年5月23日読了
寸評:ひょんなことがきっかけでスノーボードを始め、あっという間に虜になった著者、自称「おっさんスノーボーダー」として奮闘、転倒、歓喜など、その道中を綴った爆笑エッセイ集である。私もやってみたくなったが、この歳ではもう無理だろうな。

『ラッシュライフ』 伊坂幸太郎著 新潮文庫 評価☆☆☆ ’18年5月28日読了
寸評:著者は「小説でしか味わえない物語、文章でしか表現できない映像よりも映像らしい世界を創っていきたい」という強い決意表明をした。本書は5つの物語が1枚の壮大な騙し絵として収斂する。それまでバラバラに進んでいた人物たちの物語が終盤になって綺麗に解体され鮮やかに再構築される。5つの物語で全く別個の人生でありながら、それぞれが意外なところで結びつき、予想もしないところで出会う。確かにこの物語を映像化するのは困難であろうと思う。その意味では著者の思惑通りの展開になっているのかも知れないが、全体を通して私の評価は低い。一気に読み切ったが、ちょっと幅を広げ過ぎの感が大いにあり駄作の部類である。

『重力ピエロ』 伊坂幸太郎著 新潮文庫 評価☆☆☆☆ ’18年5月30日読了
寸評:ここ最近著者の作品を3作読んだが、本書では前2作の作風とは違い、複数の物語を最終的に1か所に集めたりはしていない。但し、前作読んだ「ラッシュライフ」の登場人物である黒澤がこの作品にも重要な人物として再び登場する。ここら辺は面白い設定である。そして出だしの1行と最後の1行が全く同じ文章なのも斬新的である。本書は放火と落書きと遺伝子の物語で、そこにネアンデルタール人とクロマニヨン人の違いや桃太郎の解釈、マラリア療法、古事記のコノハナサクヤヒメ、果てはガンジー語録まで出て来る。登場人物の1人が誰かの語録をしばしば使うのも著者の常套手段である。家族との回想もふんだんに取り入れ、兄弟小説、家族小説でもある。

『徳川三国志』 柴田錬三郎著 文春文庫 評価☆☆☆ ’18年6月1日読了
寸評:久し振りの時代小説である。25歳くらいまでに著者の作品の大半を読んだので30数年ぶりに手に取ったことになる。物語の主な登場人物は由比正雪を中心とした丸橋忠弥、金井半兵衛、楠不伝、天魔の三郎率いる山者集団などの張孔堂一派、松平伊豆守信綱を中核とした将軍家光、柳生但馬守宗矩、十兵衛父子、公儀隠密集団を指揮する服部一夢斎、その弟子鴉の勘兵衛、孫の志乃の信綱一派、紀州大納言頼宣を核とし駿河大納言忠長、根来忍者の頭領幻幽斎、その手下の根来忍群などの頼宣一派、この三派が鼎立し派を競い争いを展開していく。歴史小説に詳しい方は凡その想像はつくだろう。

『静かな生活』 大江健三郎著 講談社文芸文庫 評価☆☆☆☆ ’18年6月7日読了
寸評:大江文学は難解だと言われるが、難解というのは言っている人自身がしっかりした日本人であるからだという。欧米で大江文学が難解という評は殆ど無いらしい。欧米人にとって本当に難解なのは、寅さんやサザエさんらしい。20年振りに著者の本を読んだが、読み始めは確かに小難しく感ぜられ途中で放り出したくなる。入口から精度の高い文体となっているからだろうと思う。さて、物語は、父母が外国に行って留守を障害者の兄とともに守る弟妹という内容である。当初は短篇だったが、語り手である若いマーちゃんが、その娘らしい視点や語り口によって生き続けることになり、結局6作を書き一冊の長編となったもの。知能障害の子を持つ家族小説であり、フィクション化されているとはいえ、著者の長男光氏が副主人公のモデルとなっている、と著者自身が語っている。深く重い内容、そしてさわやかな読書感がある。

【6月9日過去の釣行記録】
・2005年第2埠頭中電前、17:15~19:00、大潮、釣果=キス7・アイナメ1・ギンガメ1
・2007年櫛ヶ浜港防波堤、19:30~00:15、小潮、釣果=メバル6・チヌ3・シマイサキ3・タナゴ1・ワタリガニ1
・2012年櫛ヶ浜港防波堤、19:30~21:00、中潮、釣果=メバル2
・2013年徳山築港、05:10~09:20、大潮、釣果=カレイ1・キス7

【この日の釣り情報】
・2009年東海岸通り、20:30~23:00、大潮、釣果=メバル13
・2010年切戸川河口、19:00~21:00、中潮、釣果=キス15

【旧暦4月26日釣行記録】
・1997年06月01日、日立岸壁前、17:00~21:00、船釣り、若潮、釣果=チヌ1・クロ1

 

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