千一夜第3章第183夜 最近の読書21

2019-08-31 23:59:37 | 読書

2019.08.31(土)

6月以降、私のメインである投げ釣りは、1回しか行っていない。天候の不具合もあるが、何かと行事も入る。それに若い時とは違い、暑いのはもうお手上げである。ここ最近、秋雨前線も停滞し雨が多く、暑さは一頃よりは凌げるようになってきた。9月からはそろそろ始動開始といきたい。

最近読んだ本。記載するのは今回で21回目、評価を付けるのも気が引けるが、最も面白く読んだものは☆5つである。


光市市民夏季大学のチケット購入。著名人3人の講義が何と2.500円、格安のチケットです。

『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』 関裕二著 新潮文庫 評価☆☆☆☆☆ ’19年7月9日読了
寸評:丁度この本を読んでいる時に、大阪の百舌鳥・古市古墳群が世界文化遺産に登録が決定(7/5)された。偶然とは恐ろしいもので、ずばりこの本の内容そのものである。以前にも同じような体験があったが何だか忘れてしまった。著者の本は10冊程度読んでいるが、古代史研究に於いて考察の正否は別として、非常に面白く読めるし、その現場を訪れてみたくもなる。本書は大阪に於ける古代史の考察である。国生み神話から何故淡路が最初の島だったか、早良親王との関係、泉州と行基さまの関係、百舌鳥古墳群や古市古墳群を中心とした巨大古墳の謎に迫り、大阪とはいったいなんぞね?と編集者と共に淡路・大坂を巡り歩く。私も同じルートで旅がしたくなった。

 『サワコの和』 阿川佐和子著 幻冬舎文庫 評価☆☆☆☆ ’19年7月11日読了
寸評:私にとっては毎度お馴染みの阿川佐和子である。この作品は2004年3月刊行だが、最近は良く重複して本を購入したりするし、著者の本も40冊弱(大半がエッセイ集と対談集)読んでいるので、手に取った時は重複が少々不安にもなるが、幸いというか今回は重複していなかった。文体はごく自然体で読み易い。著者は私よりも2歳年上であり、言うなればほぼ同年のようなもの(厳密に言えば昭和20年代生まれと30年代生まれでは大きく違うが)であるから、エッセイに書かれている内容も、ああ昔はそうだったなとか、うち(家)でもそんなことをしていたなとか共感できる話題や新たに思い出させてくれることも多い。厳格で自己中で瞬間湯沸かし器、しかも吉行淳之介氏のおもちゃのような父、弘之氏も好きであり、何よりも娘の佐和子氏が父親の血をしっかり引いておられるところが素晴らしく好ましい。

『楊家将』(上)・(下) 北方謙三著 PHP文庫 評価☆☆☆☆ ’19年7月18日読了
寸評:本書は第38回吉川英治文学賞を受賞。「楊家将」は、中国で「三国志」を越える壮大な歴史ロマンとして人気があるそうだ。「三国志」や「水滸伝」は漢民族同士の内戦の物語だが、この「楊家将」は異民族との熾烈な戦争を描く。舞台は10世紀末の中国、北韓から宋に帰順した軍閥・楊家が主人公である。楊家一族で北韓を滅ぼし国を建てることも可能だったが、旧主に反旗を翻すことは避け宋に帰順する。宋では北から領土を脅かす遼と対峙するため、北辺の守備についていた。遼の耶律休哥軍との戦いが主戦となるが、宋の皇帝が遼の間者王欽の策略に嵌り楊家が危機を迎える。伝説の英雄、楊業と7人の息子たちの熱き戦いを描く。


オリンピック記念硬貨第2次分100円6種が7月24日に発行されるというポスター(写真は7月17日から銀行に掲示してあったポスター)。

『ピラミッド』 河江肖剰著 新潮文庫 評価☆☆☆☆☆ ’19年7月24日読了
寸評:著者自身が立っているエジプト学研究の最前線へと我々を誘うために、本書では約4500年前に築かれたピラミッドを、「どのように作ったのか」「なぜ作ったのか」「誰が作ったのか」という3つの大きな視点からピラミッドのリアリティが描かれ、最新発掘調査と先端技術のデータを用いて解説する。ピラミッド・タウンの発見、発掘調査により、「人間」に焦点を当てて考察する。黄金に輝く宝物とは無縁の現場で蓄積された「情報」を基に、ギザ台地で生きた人々の日々の営みと建設中のピラミッドが佇む風景に宿るリアリティは悪漢である。本書は2015年に刊行後、エジプト学の領域にもたらされた新たな発見(2017年11月にギザの大ピラミッドに謎の空間発見)や知見が書き加えられている。著者は現在ではドローンを用いた三次元測量プロジェクトに関わっている。尚、遺跡の詳細について書かれたものは、日本語では本書が初めてのこととのこと。

『山霧 毛利元就の妻』(上)・(下) 永井路子著 文春文庫 評価☆☆☆☆☆ ’19年7月日読了
寸評:1985年6月の作品。16世紀初頭、土豪たちがひしめく中国山地の小領主だった毛利元就の元へ鬼と言われる吉川國経の娘が輿入れした。元就と妻おかたとの27年間を描き出した物語である。乱世の梟雄毛利元就の物語ではなく、中国山脈の山裾の霧の中を這いずり回りつつ、16世紀を生きた若い男と女の話であるという書き出しで始まる。毛利も吉川も安芸の国人層で地元勢の小領主である。元就の所領は300貫でその居城猿掛城もちっぽけな城、その支配も脆弱であり徹底してはいなかった。大内氏と尼子氏という2大勢力の狭間で翻弄されながら、どう生きのびるか何かと気苦労が絶えない。育ちも性格も対照的な2人だが、二人三脚で夫婦の夢を紡いでいく。物語の後半は、尼子軍との合戦を通して元就が戦国大名としての基礎を確立していくプロセスを描く。そして妻おかたの終焉までを描く。ヒロインおかたの生きざまを見据えることで、戦国期の政略結婚に対する常識と元就のイメージを覆す新境地の戦国ものである。

『白夜行』 東野圭吾著 集英社文庫 評価☆☆☆☆☆ ’19年8月9日読了
寸評:860頁もの文庫本は久し振りに読んだ。しかし実際にはそんなに分量を感じさせなかった。読み終わってみればあっという間だった。複雑巧緻なトリックを駆使した本格ミステリー、サスペンスである。著者は様々なジャンルの小説を書き分けるが、本編はノワール的な小説だと言われる。ノワールとは聞き慣れない言葉だが、暗くてダークな小説をいう。人間の心の暗い側面、邪な断面を描く、或いは暗く邪な人間がそうならざるを得なかった人生、世界を描こうとするものらしい。物語は20年にも及ぶ二人の男女の物語で、幼い時に落ちた落とし穴から這い出ようともがく二人には決して明るい昼の光は当たらない。白夜のように曖昧な薄暗い光が二人の行く手をただ照らすだけ。その道行は暗く、おぞましく、利己的で、だがそれ故に哀切を帯びている。この物語で著者は二人の内面を一切描かない。二人の主人公は、彼らを取り巻く人間たちの視点を通してだけ描写される。つまり二人の行動のみが描写されているのだ。こういう手法はハードボイルド小説に多く見られるが、成功例は稀である。しかし本編ではそれに成功している。


7月24日、第2次東京オリンピック記念硬貨100円6種が発行された。次は来年1月、7月の予定だ。

『無言殺剣 正倉院の闇』 鈴木英治著 徳間時代小説文庫 評価☆☆ ’19年8月20日読了
寸評:著者の本は初めて読んだ。来年辺り奈良方面に行ってみようかと思っていた矢先に、この本の表題が目に入って来たので、特に何も考えずに手に取った1冊である。箇条書きのような文体で、文字を削れば良いというものでも無かろうと思いながら読み進めた。物語の主人公は音無黙兵衛、正倉院宝物流出の濡れ衣を着せられて自害に追い込まれた父・菅郷左衛門の事件の真相を突き止めることを誓ったが、鍵を握る人物の死や失踪により真犯人探しは遅々として進まない。そんな折、黙兵衛を狙う新たな刺客が送り込まれてくる。この無言殺剣という本もシリーズものだったからかどうか解らないが、終わり方もしっくりこない。続きを読もうという意欲が全く沸いてこなかった。

『外国人が見た日『外国人が見た日本 「誤解」と「再発見」の観光150年史』 内田宗治著 中公新書 評価☆☆☆ ’19年8月27日読了
寸評:明治期から現在の観光旅行案内の対比や外国人の国内旅行の変遷(明治32年の条約改正により外国人は自由に国内旅行ができるようになる)、或いは明治期からの日本のホテル事情、訪日外国人のランキング推移などを時系列に紹介していく。そして現代の観光立国事情へと移る。
日本国政府は2020年訪日外国人客の目標4000万人と発表。中でも中国人の訪日客は増加の一途を辿り全体の1/4を占め、外貨獲得に於いては4割を占めるという。現在の韓国との政治状況からして観光客は激減し、国交断絶へと向かいつつあるが、中国にしても現在は増加し続けている観光客だが先行きは不透明、諸刃の剣であろう。政治状況によっては中国の対韓国、対台湾のように旅行禁止令が出るケースもある。それでも現状では増加し続けている。反面、戦争・テロ・伝染病・などのリスク、世界経済不況・為替相場・天災等々多くのリスクも抱えており、他国では観光公害(違法駐車・ゴミ・騒音・交通渋滞・個人のプライバシー侵害・路上独占・ホテル満室・マナー問題(マナーは教えないと解らないからモラル問題かな)等)による観光客のボイコット運動もある。観光業界はこうしたリスク・ヘッジに晒されているが、それらを踏まえての将来設計が必要となってくる。

『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ著 ハヤカワ文庫 評価☆☆☆☆☆ ’19年8月30日読了
寸評:ノーベル賞作家、ブッカー賞作家である。回想から始まる静かで端正な語り口調の文章は、直ぐに物語の主人公の置かれている状況は察知し難い。著者の常套手段である。いきなり「提供者」 という言葉が出て来るが何のことか解らない。徐々にゆっくりとその状況に馴染み理解していく。この作品の場合、私は物語の内容について具体的に述べることは避けたい。読了後直ぐにそのことを思った。なぜならこの小説は物凄く変わった小説であり、作品世界を構成している要素の一つひとつを、読者が自分で発見すべきだと思ったからだ。予備知識が少なければ少ないほどよい作品だと思う。一つ言えることは、今後の世界に於いて十分起こり得ることだということである。


8月26日に発行されたオリンピック・パラリンピックの第2弾小型切手シート。

【8月31日過去の釣行記録】
・2014年平群島沖、06:00~12:30、小潮、船釣り、釣果=オコゼ1・カサゴ1・カワハギ1・アジ多数

【この日の釣り情報】
・この日の釣り情報はありません。

【旧暦8月2日釣行記録】
・2006年09月23日、華西防波堤、17:00~01:50、大潮、釣果=メバル10・クロ1・アジ10・タナゴ2
・2010年09月09日、粭島小瀬戸、18:45~20:45、大潮、釣果=アオリイカ2・アジ2

 

http://blog-parts.wmag.net/okitegami/base.php?ser=36906&m=219b56b2lb68fdf326a81

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