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将棋棋士の呼称・肩書のルール

2023-10-18 22:00:00 | 囲碁・将棋

将棋棋士の呼称・肩書のルールについて解説する。序列規定のように明文化された規則はなく慣習であり、原則は以下のとおり。

(1)名人、竜王を持っているかどうか

名人、竜王を持っている場合は呼称は必ず名人または竜王になる。両方持っている場合は竜王・名人とよばれる。現在藤井聡太は八冠を保持しているが、藤井聡太竜王・名人であり、藤井聡太八冠ではない。

他にも渡辺明が名人を含めて三冠だった時代は渡辺明名人であり、渡辺明三冠ではない。

なお、段位の免状は名人、竜王の順に署名され両方持っている場合は名人・竜王と署名されることが多い

(2)他のタイトルを保持しているかどうか<(1)に該当しない場合>

タイトルを保持してる場合はタイトルの呼称で呼ばれる。複数持っている場合は二冠、三冠などと呼ばれたり、王位・王座などと呼ばれる。王位・王座のように具体的なタイトルで呼称する場合の順番はタイトルの序列順になる。

例えば羽生善治が王位・王座の二冠だった時は羽生善治二冠又は王位・王座と呼ばれていた。タイトルの序列は棋戦の契約金額の順番。日本将棋連盟の棋戦一覧で上に記載されたものほど上位の棋戦

(3)永世名人を襲位しているかどうか<(1)(2)に該当しない場合>

永世名人を襲位している場合は、その呼称で呼ばれる。他にどれだけ永世称号を持っていても同様。例えば大山康晴や中原誠は永世名人の他にも永世棋聖などを襲位したが大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人と呼ばれる。

なお、永世名人は序列においても他の永世称号襲位者より上である

(4)他の永世称号を襲位しているかどうか<(1)(2)(3)に該当しない場合、例外あり>

他の永世称号を襲位している場合は、その呼称で呼ばれる。例えば米長邦雄永世棋聖などと呼ばれる。永世名人以外の複数の永世称号を襲位した場合の呼称のルールについては前例がなく不明。これまで複数の永世称号を襲位したのは大山康晴と中原誠だけで、どちらも永世名人を襲位したため。渡辺明が永世竜王と永世棋王の資格を取得している。呼称の例として、タイトルに準じる扱いをするなら、永世竜王を保持した場合は他に永世称号を持っていても永世竜王と呼ぶかもしれない。永世二冠、永世竜王・永世棋王などのように呼ぶかもしれない。具体的に永世竜王・永世棋王のように呼ぶ場合はタイトル序列の順に呼称されるだろう。

例外として追贈のタイトル称号を贈られた場合は、その呼称になることがある。塚田正夫は永世九段を持っていたが、名誉十段を追贈され、塚田正夫名誉十段と呼ばれている。

(5)実力制名人や追贈のタイトル称号を襲位しているかどうか<(1)(2)(3)(4)に該当しない場合>

実力制名人や追贈のタイトル称号を襲位している場合は、その呼称で呼ばれる。例えば升田幸三実力制第四代名人、土居市太郎名誉名人と呼ばれる。升田幸三は名誉名人を打診されたが「名誉名人は名人になれなかった者の称号だ。私は名人になった。」と言って固辞したという。塚田正夫は永世九段や実力制第二代名人を持っているのに追贈の名誉十段で呼ばれている。

たぶん塚田正夫は永世称号を持っているのだから、その称号で呼ぶべきだが、永世九段は段位としての九段の称号に似ていて呼称として権威に欠けるので避けたい。かといって永世十段の資格を持っていないので、そのように呼べず折衷案で名誉十段と呼ばれているのかもしれない。名誉九段も九段になれなかった人に対して追贈されるもので、「名誉」といっても余り名誉でないところがある。

(6)段位<上記以外>

タイトルをもたず永世称号、追贈の称号を襲位していない場合は段位で呼ばれる。例えば渡辺明九段、豊島将之九段などと呼ばれる。

原則は上記のとおりだが、状況によって呼び方が変わる。

(A)タイトル戦や一般棋戦の前優勝者

タイトル戦では必ずタイトルホルダーが棋戦タイトルで呼ばれる。藤井聡太は八冠でも棋王戦では藤井聡太棋王と呼ばれる。NHK杯では前回優勝した藤井聡太は八冠でも藤井聡太NHK杯選手権者、藤井聡太NHK杯などと呼ばれる。

(B)複数のタイトル保持を強調したい場合の報道

藤井聡太が八冠全冠制覇を達成したことを強調したい場合など、複数のタイトル保持を強調したい場合には藤井聡太八冠などと呼ばれることがある。

(C)署名するとき

署名する場合は場合によって正式な呼称以外の永世称号を署名することがある。永世称号を襲位していなくても永世称号で署名(signature)するようだ。たぶんサイン(autograph)するときにも永世称号を襲位していなくても、その肩書を記載することがある。

なお署名(signature)とは契約書や任命状などに自署するもの、サイン(autograph)は有名人などが色紙などに自署するもの。

(D)タイトルを失った直後や回想の場合

タイトルを失った直後は失ったタイトルで呼ばれることがある。例えば第71期王座戦第4局では永瀬拓矢がタイトルを失った直後は正式には永瀬拓矢九段だが、タイトル戦の中継時には解説で永瀬拓矢王座と呼ばれていた。

タイトルをとった直後に藤井聡太新王座などと呼ぶこともある。

過去の棋戦を振り返って「加藤一二三名人と谷川浩司八段の名人戦は・・・」などということもある。

(E)スポンサーの放送や報道の場合

スポンサーの放送や報道の場合に優勝者は棋戦の呼称でよばれることがある。例えばNHKの将棋番組や報道の場合、藤井聡太は八冠でも藤井聡太NHK杯選手権者、藤井聡太NHK杯などと呼ばれる。他、産経新聞でも藤井聡太竜王・名人、八冠ではなく、藤井聡太棋聖と呼ばれることがある。

以上。原則は上述のとおりだが、状況によって呼称はいろいろ変化するようだ。