素因数分解は正の整数を素数の積で表すことである。1は素数ではなく、素数を全く約数に持たないから、1を素因数分解することはできないと思える。しかし、Wikipediaによると、『1の素因数分解は1と定義する。』とある[1]。これはおかしいと思う。1は素数でないのに、1の"素因数"分解が1とは不合理である。学問上の深い考えがあってこのような定義になっているのかもしれないが、少なくともこの定義は通常の素因数分解とは異なる。
任意の素数の0乗の組み合わせで積を作れば、1を素因数分解したかのような表記になるが、この表記は無数に存在し、素因数分解の表記が一意とならない[2]。
例えば 1 = 20 = 20・30 = 20・30・50 = 20・30・50・70 = 20・30・50・70・110 などいろいろある。
このような表記が一つに定まらないものを素因数分解として認めるのが合理的かどうかは議論しないが、少なくとも表記が一意でない点で通常の素因数分解とは異なる。
思うに、1は素数ではないし、素数の約数を持たないのだから素因数分解できないと考えるのが自然である。
上述のとおり、素因数分解は正の整数について考えるのが通常だが、便宜的に負の整数の素因数分解を「負の整数の絶対値を素因数分解し、それに負符号を付けたもの」と定義し、素因数分解の範囲を整数全体に拡張する。すると、素因数分解できない整数は0 , ±1だけである。これらの数は整数の中でも特殊な数といえよう。1は素数でなく、合成数でもなく、単数である。-1は素数や合成数に負符号を付けて表せない。0は偶数だが、素数ではなく、合成数でもなく、単数でもなく、正の数でもなく、負の数でもない[用語1, 2]。
0や±1はおもしろい性質を持っているといえる。
参考
[1]素因数分解 Wikipedia 2009.10.19
[2]2以上の整数を素因数分解すると表記は1通りだけである。これを素因数分解の一意性という。無論、証明可能だがここでは割愛する。
用語
[1]合成数:1 と自分自身以外の約数をもつ自然数。二つ以上の素数の積。 goo国語辞典 2009.10.19
[2]単数 Wikipedia 2009.10.19