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世界変動展望

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1はなぜ素数ではないのか。

2009-10-20 00:17:24 | 物理学・数学

素数とは「1より大きく、1 と自分自身以外には約数をもたない正の整数」である。具体的には2,3,5,・・・などである。では1はなぜ素数ではないのか。「1 と自分自身以外には約数をもたない正の整数。」という部分だけ考えれば1も素数でいいと思える。なぜなら1は自分自身以外約数を持たない正の整数だからだ。

1を素数から除外した理由は、算術の基本定理などを保つためである。算術の基本定理とは2以上の整数を素因数分解したとき、表記が一通りとなることをいう。

1を素数とすると1は何乗しても1であるため、素因数分解後の表記は無数の形があり得る。例えば、12 = 22 ・3 = 1・22 ・3 = 12・22 ・3 = ・・・、のように無数の表記があり得るため、1を素数とすると算術の基本定理を破ってしまう。そのため、1を素数から除外したのだ。1を素数から除外すれば正の整数の素因数分解後の表記は一通りとなる。

たまに「1を素数とすると、任意の正の整数は1を約数に持つから1以外は素数でなくなってしまってまずいので、1を素数から除外した。」と考えている人がいるが、これは間違いである。なぜなら、これはエラトステネスの篩写し)で素数を決める場合の話で素数の根源的な考えに基づけば1を素数と考えることもでき、それに反するからである。エラトステネスの篩によって1を素数から除外したという考えは次のものだ。エラトステネスの篩で素数を決めるなら1を素数とすると自然数は全て1で割れるので1以外に素数はないことになる。しかし、そうならば1以外の自然数は素因数分解した時に1のみを素因数にもつ事になり不合理である。例えば3=1×3であり、素因数分解したとき最低限度3は必要で、素因数が1のみなら3を素因数分解で表せない。従って1を素数からはずしたという考え。これは素数の根源に基づく説明でない。

本来素数は正の整数を素因数分解したときの構成要素となるので"素"数とされた。1を素数としても、1以外の正の整数が素数となるのは明白である。1以外に素数がないとすれば、1以外の正の整数はすべて1の積で表せなければならないが、それは不可能である。例えば、3 = 1×3であり、3を素因数分解するには3が不可欠の構成要素となる。故に、素数の定義には「1 と自分自身以外には約数をもたない正の整数。」という要素が必要不可欠となる。

注意すべきなのは、1を素数としても正の整数を素因数分解できるという事だ。例えば 3 = 1×3、12 = 1×22×3、のように素因数分解できる。従って1を素数と考える事もでき、昔は1も素数と考えていた数学者たちがいた。算術の基本定理も「正の整数を1以外の素因数の積で表した時の表記が一通り」と解釈変更すれば成立する。このように1を素数とし、他の定理を解釈変更などし、かつそれを認めていくなら1を素数とする事もできるのである。こう考えると、エラトステネスの篩で素数を決める方法は考え方自体が不適切という事になる。なぜならエラトステネスの篩で素数を決めたら1を素数としたときに不合理になるため、素数の決め方として採用できない。

現代において1を素数から除外した理由は、最初に説明したとおり算術の基本定理などを解釈変更することなく維持するためである。素数であるために必要不可欠な要素は素因数分解した時の構成要素となることだから、素数の定義には「1 と自分自身以外には約数をもたない正の整数。」という要素が必要だ。

この要素だけなら1を素数と考えることもできる。1も「1と自分自身(1)以外には約数をもたない正の整数」だから素数である。同語反復のような部分もあるが、解釈によってこの定義でも1を素数にできる。にも関わらず1を素数から除外する必要があるのは、算術の基本定理などを解釈変更なく維持したいからだ。

そのために「1 と自分自身以外には約数をもたない正の整数。」という要素に加え素因数分解の一意性の要請などからくる「1以外の正の整数」という要素が加わることで、素数の定義は「1より大きく、1 と自分自身以外には約数をもたない正の整数」となったのである。

1が素数でないことで、素因数分解が一意となるという重要な性質を正の整数が獲得することになる。定義次第で数の重要で基本的な性質が変わってしまう。定義づけがいかに重要かという典型的な例といえよう。