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世界変動展望

私の日々思うことを書いたブログです。

京都大学の数学-1986年度入試

2008-11-05 02:23:01 | 物理学・数学


この問題は難関大学対策として難問を解きたい受験生に手ごろな問題として取り上げた。しかし、正直なところ私が本問を解いた限り、それほど難しい問題ではないと感じた。

本問を難問とする根拠は、本問が受験用の数学書籍出版で有名な数研出版の問題集『チャート式シリーズ-数学難問集100』(2008.11月時点での最新版)の試練編に収録されていることである。ネットでの評判によると、『数学難問集100』は最難関大学を目指す最上級受験者用の問題集で入門編と試練編からなる。同書籍によると、試練編の問題は難問で解くのがたいへんだという。ネットでの同書籍の評判では、『同書籍は極めて難しく最高難度の問題集である。偏差値70以上の受験生向け』と評されているので、本問は多くの受験生にとって難問だと考える。

さて、本問を解く上で重要なことは、最初から一般的な場合を考えるのではなく、n=1,2,3といった簡単な場合で検討して問題の性質をつかむことである。いきなり一般的な場合を考えても解答の指針に気づきにくい。小さい値で具体的に考えることは数列問題のような規則性を持つ問題で重要である。

例えばn=2のときは、a1+2*a2=(a1+a2)+a2,  a1+a2=0かつa1≦a2なので  a2 > 0
∴ a1+2*a2 >0

n=3 のときは、 a1+2*a2+3*a3 = (a1+a2+a3)+(a2+a3)+a3
a1+a2+a3=0 かつa1≦a2≦a3なのでa1<0、a2+a3=(a1+a2+a3) - a1 = -a1 >0, a3 > 0
∴ a1+2*a2+3*a3 >0

この程度までやれば規則性に気がつくだろう。
a1+a2+・・・+an=0から、a1,a2,...,anのうちのどこかで符号が入れ替わる要素(解答では一番0に近い負の実数をakとした)があるが、その前後で説明を分ける必要がある。しかし、分けたとしても説明は容易だ。後はつかんだ性質をきちんと説明するだけである。例えば、私は解答のように説明した。

数学難問集などの模範解答では違った解釈[後述]や数学的帰納法を用いて説明していた。私は最初に本問を解く際に上述のように考え、上記のような解答に至った。受験生は模範解答を問題集で見るだろうから、別な解法もあることを示すため不肖な著者の独自解答ではあるが、こちらの方を掲載させていただいた。

本問で問題な点は『すべては0でないn個の実数a1,a2,...,anがあり』という文章が2通りに解釈できるため、曖昧なところだ。具体的には、「すべては0でない」の意味を

①a1≠0,a2≠0,...,an≠0
②a1=a2=・・・=an=0ではない。すなわち、a1,a2,...,anのうち少なくとも1つは0でない。

の2通りに解釈できる。私は①の意味で解釈し解答しているが、数学難問集や他の業者の解答では②の意味で解答しているようだ。どちらで解釈しても題意を証明できるため、どちらが合理的解釈なのか不明だ。この点は出題者の文章ミスなので解答者の責任ではなく、どちらで解答してもよいのではないか。②の解釈での解答を参照したい方は数学難問集などを参考にしてほしい。もっとも、a1,a2,...,anのうちの正の要素の不等号が変わるくらいで、あまり違いはない。

運がよかっただけかもしれないが、私は上述のような考察をした結果すんなりと解答の指針が立ち結論まで至ったので本問を難しく感じなかった。ただ、私は受験のプロではないし、評価が適切でないことも十分考えられる。それに問題の難度評価は主観的なもので、解いた人によって違うものだろう。少なくとも、受験参考書の著者は受験の専門家であり、彼らの難度評価の方が私よりも適切である。

本問は難問に分類されるものだから、解答時間は30~40分程度が適当ではないか。基礎・標準問題は十分対処できて、難関大学向けに難問を解いて修練したいという受験生はぜひ挑戦してほしい。



2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (理3志望)
2011-08-05 07:22:33
この記事をみて面白そうと思いといてみた.確かに難しいとはいえず20分くらいで終わった.
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上出来 (世界変動展望 著者)
2011-08-06 00:10:35
それくらいの時間で解けたのなら上出来でしょう。
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