従業員に時間外労働をさせたときの割増賃金は、月給制の場合、「月の所定賃金額÷月あたり所定労働時間数」で1時間当たりの単価を算出する。
この「所定賃金額」には、基本給以外の諸手当も含むのが原則だが、「家族手当」や「通勤手当」のような個人的事情に基づいて支給される手当は、労働とは直接的な関係が薄いことから、割増賃金を計算する際の基礎としては算入しないこととされている(労働基準法第37条第4項)。
とは言うものの、このような名称の手当であれば必ず除外できるわけではなく、「家族手当」は「扶養家族の人数等を基準として算出した手当」であること、「通勤手当」は「通勤距離または通勤に要する実費に応じて算出した手当」であることが条件となっている。
すなわち、例えば、家族手当で言えば、従業員全員に対し一律に一定額を支給したり、世帯主である従業員に(扶養家族の有無や人数に関係なく)支給したり、といったものは、割増賃金の計算基礎に含めなければならない。
片や通勤手当については、問題となるケースはあまり多くないが、それでも、例えば、実際の通勤距離等にかかわらず「1日300円」を支給する、といったものは該当しないので、要注意だ。なお、税務上の課税・非課税は、この処理に際して、まったく関係ない。
これらを整理してみれば、実質的に「第2基本給」的な意味合いを持つ手当は、「個人的事情に基づいて支給されている」とも「労働とは直接的な関係が薄い」とも言いがたいため、割増賃金の計算基礎に含めなければならない、と理解できそうだ。
無論、それぞれの会社が従業員に支給する手当にどのような呼称を用いようと(公序良俗に反しない限り)自由ではある。しかし、労基法上、割増賃金の計算基礎から除外できるかどうかは、名称ではなく実態を見て判断されることは承知しておくべきだろう。
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