ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

定額残業代(固定残業代)にメリットは無いのか?

2015-07-03 11:58:02 | 労務情報

 時間外手当は、所定労働時間を上回って労働した時間数に応じて支払うのが原則だが、労働契約上、予め一定額の時間外手当を支払うこととしておくことも可能だ。この制度は、一般的に「定額残業代」(または「固定残業代」)と呼ばれ、特に毎月恒常的に一定量の時間外労働が発生するような業態において導入されることが多い。

 さて、この制度を導入した場合、会社にとっては、どのようなメリットがあるだろうか。
 多くの経営者は「人件費コストが抑えられる」・「事務量が軽減できる」といったメリットを挙げがちだが、実は、このどちらも誤解に基づくもので、メリットではない。
 まず、人件費コストに関しては、一定額の時間外手当を支払ったとしても、それを上回る時間外労働があった場合には、超過分の時間外手当は支払わなければならないのだ。それどころか、想定していた時間外労働よりも実働時間が少なかった月にも決まった固定額を支払わなければならないので、コスト的にはむしろデメリットが大きいと言える。
 また、事務量に関しては、上記理由から、結局は実働時間を管理しなければならないのであり、事務量は変わらない。

 これを捉えて、「定額残業代制度を正しく運用しようとすれば会社にメリットは無い。すなわち、定額残業代を採用している会社は初めから正しく運用せずに残業代支払いを免れようとする“ブラック企業”だ」と主張する識者もいる。が、本当に、定額残業代にメリットは無いのだろうか。
 否、そんなことはない。定額残業代にはメリットが有るのだ。以下、それを述べてみたい。

 まず、労働者にとって「毎月の固定収入が増えるので生活の安定につながる」というのは、大きなメリットであるはずだ。また、時間外労働が少なくても賃金額が変わらないことから、時間外労働を抑制しようとする心理が働き、直接的には生産性の向上に、さらには間接的ではあるがワークライフバランスに寄与するといった効果もある。
 会社にとっては、それをリクルーティングの好材料として使え、優秀な人材を採用しやすくなる。また、事務的には、毎月同じ金額を支払うなら税額計算等の手間が減り、万が一計算ミスが発生した際にも金額の差異から発見しやすくなるという側面もある。

 定額残業代は、人件費削減や事務量軽減のためでなく、労働や事務の“品質”の向上をを図れることにこそ真のメリットがあることを、正しく認識しておきたい。


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