「おや、此処だけ初雪かしら?」と訝った。
離れた処から観れば、岩の上に這う蔓に初雪が積もった風情だ。蔓の先の部分の葉は白く、月日を経た葉は緑色に変色している。新芽の部分は、淡いピンクに染まって可憐な色合いだから堪らない。名前も「初雪蔓(かずら)」と、なかなか風流だ。
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この蔓を玄関先などに植えているお宅では、訪ねて来られた客人や、或いは道行く人びとに、住人に代わって「初雪かずら」に笑顔のご挨拶をさせているお積りであろう。真に心憎い気配りだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/24/a7f5a75115d22b78eb1c1e5c43a47aa6.jpg)
花が萎れ枯れれば愛嬌は失せるが、「初雪かずら」は季節に応じた葉色の変化は比較的に乏しいようだ。
春夏秋冬、笑顔を絶やさぬ優れものといえよう。
近寄って観れば、新芽は恰も花の莟かと見紛う程だ。虚庵居士は年間を通して観察したわけではないが、季節による変化は比較的乏しいとはいえ、春から夏にかけての成長の季節は、美しさもそれなりに加わることだろう。そんな時節に、また逢いたいものだ。
岩の上 何故に其処だけ初雪か?
訝る思ひの景色なるかな
岩に這う「初雪かずら」に騙されぬ
蔓の先々雪を抱きて
近寄れば恥じらい含むや白妙の
頬染む乙女の笑みにあふかも
訪ね来る客人ならず道を行く
人々にまで微笑む風情ぞ
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