1週間ほどの間に、真紅の薔薇が燃え滾るかのように満開となった。
かつて虚庵居士は、この真紅の薔薇が滾り咲く姿に、恥ずかしながら老いらくの恋をした。その時の長歌と反歌を、旧作ながらご紹介する。
『薔薇を娶らむ』
あゝ せめて
我が身の齢(よわい) いま少し
若くしあれば 紅の
かくも気高く 香りたつ
薔薇の化身の 乙女をば
魔法を解きて 現身(うつせみ)の
滾り燃え立つ 美女となし
手を取りあいて
娶らむものを
狂おしく咲きたるばらは惜し気なく
散りて尽くさむ残り香いとしき
それ以来、この紅薔薇が咲くと心がときめくのは、虚庵居士の老いらくの恋が続いているのだろうか。当時の紅薔薇の写真を観れば、花数もこれ程ではなかった。
近年ますます滾り咲くように見受けられるが、魔法が解けぬままに、年を重ねても
美女は老いるどころか、恋心を益々滾らせているのかもしれない。
香り立つ気品ある残り香がいとしくて、舞い散る花びらを竹籠に拾い集めて、道行く人々に香りのお裾分けをする虚庵居士だ。短冊に走り書きした歌一首。
舞い散るもなお香しき花びらの
心を受けまし御足とどめて
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