「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「滾る紅ばら」

2015-05-11 02:32:54 | 和歌

  1週間ほどの間に、真紅の薔薇が燃え滾るかのように満開となった。



 かつて虚庵居士は、この真紅の薔薇が滾り咲く姿に、恥ずかしながら老いらくの恋をした。その時の長歌と反歌を、旧作ながらご紹介する。

          『薔薇を娶らむ』  

          あゝ せめて
          我が身の齢(よわい) いま少し
          若くしあれば 紅の
          かくも気高く 香りたつ
          薔薇の化身の 乙女をば
          魔法を解きて 現身(うつせみ)の
          滾り燃え立つ 美女となし
          手を取りあいて 
          娶らむものを

          狂おしく咲きたるばらは惜し気なく
          散りて尽くさむ残り香いとしき



 それ以来、この紅薔薇が咲くと心がときめくのは、虚庵居士の老いらくの恋が続いているのだろうか。当時の紅薔薇の写真を観れば、花数もこれ程ではなかった。
近年ますます滾り咲くように見受けられるが、魔法が解けぬままに、年を重ねても
美女は老いるどころか、恋心を益々滾らせているのかもしれない。

 香り立つ気品ある残り香がいとしくて、舞い散る花びらを竹籠に拾い集めて、道行く人々に香りのお裾分けをする虚庵居士だ。短冊に走り書きした歌一首。

          舞い散るもなお香しき花びらの

          心を受けまし御足とどめて







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