「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「うつろ庵の住人」

2011-10-22 01:38:43 | 和歌

 「うつろ庵」には様々な生き物達が、虚庵居士夫妻と仲良く暮らしている。

 それぞれが、どの様なきっかけで「うつろ庵」に棲みついたは不明だが、いつの間にか腰を落ち着けて居るところを見れば、住み心地がいいのであろう。小鳥の置き土産?から芽吹いた花木や、自分の意志で飛んできた昆虫、時には野良猫。椿の枝に巣作りして抱卵した鳩ポッポは、お隣さんの雨戸の軋み音で逃げ出したが、そんな些細な事は意にもかけない風情の蜥蜴(トカゲ)など等だ。

 玄関先の浜姫榊(はまひさかき)が些か徒長したので、刈込をしようと大鋏を構えたら、「蜥蜴」が腹を広げて日光浴の最中であった。「うつろ庵」には大小様々な蜥蜴が棲みついているが、初秋から晩秋にかけては腹を広げて、日光浴を楽しんでいる姿をよく見かける。この蜥蜴も太陽の恵みを精一杯受け止めて、ご満悦の風情であった。



 以前にも同じ浜姫榊の刈込の上で、日向ぼっこをしていた蜥蜴をカメラに写したことを思い出した。やっとの思いで探し出したら、浜姫榊の白い小花と一緒に納まったトカゲ君が見つかった。

 トカゲ君も「うつろ庵」の住民ではあるが、彼らについて物を書くことなど全くないので、漢字を思い出せなかったが、パソコンではたちまち漢字に変換された「蜥蜴」を、改めてまじまじと見た。「虫偏に折れ易い」とは・・・。

 トカゲは身に危険が迫ると、咄嗟に自らシッポを切り落とす非常手段の持ち主だ。 切られたシッポは、激しくピコピコと動き回り、攻撃した側はそのシッポの動きに気を取られている間に、トカゲ君は素早く身を隠すという、極めて高度な護身術を身に付けているのだ。「蜥蜴」という漢字を当てた古人は、「折れ易い=切れ易い」シッポの特徴を知り尽くしていたのであろう。

 それにしても、身に迫る危機を的確に感じ取り、自ら長いシッポを切り落とす蜥蜴の決断力には、人間どもも見習いたいものだ。極めて大きな危機に見舞われて、何時までも右往左往する人間社会は、蜥蜴に言わせれば「シッポも切れない阿呆」ということになろう。しかしながら、重大事に見舞われてヘッポコな部下の首を切って、己の安泰を図るトップを間々見かけるが、これは頂けない。

 「うつろ庵」では、シッポの切れた蜥蜴をトンと見かけぬので、彼らにとっては安心この上ない住処なのであろう。


 

          剪定をせむと鋏を構えれば

          のどかに蜥蜴が日浴びをするらし


          ゆく秋の日差を浴びて心地よげに

          身じろぎもせぬ蜥蜴くんかな


          虫偏に折れ易きとは是如何に

          咄嗟に身を切る蜥蜴の秘策を


          身に迫る窮地に至らば己が尾を

          切り捨て命を守る蜥蜴ぞ


          小首傾げじじの言葉を待ちおるや

          庵の蜥蜴も相住む朋かな







最新の画像もっと見る

コメントを投稿