「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「波打つ茅 ・ちがや 」

2010-06-14 00:18:03 | 和歌

 「茅 ・ちがや 」の群落が初夏の風を受けて、一斉に波打っていた。
ここは横浜横須賀道路の終点、馬堀海岸ICのすぐ脇の原野の情景だが、来年あたりはこの情景も消えうせるかもしれない。





 首都高速に乗って湾岸線を走れば、羽田を横目に見つつあっという間に大黒JCT・ベイブリッジを経て、横浜横須賀道路に入る。三浦半島の起伏の豊かな山並みの緑と、東京湾沿岸の風物を楽しみながら、ものの三十分も走れば高速道路の終点、馬堀海岸ICに至る。海岸への緩やかなスロープを車で走れば、猿島が目の前に現れ、あっという間に国内最大級の椰子並木の海岸道に出る。

 そのまま右折して走れば、五分程で観音崎。左折すれば十分程で戦艦「三笠」を経て、米国海軍・横須賀基地だ。云わずと知れた原子力空母「ジョージワシントン」の母港だ。この写真の「茅 ・ちがや 」群落の向うには椰子の並木が見えているが、この並木は一部断続するが凡そ五キロに亙って、三笠公園近くまで続いている。

 「茅 ・ちがや 」群落は、やがて訪れる大きな環境変化を知る由もない。
群落の隣のテント囲いの中では、温泉掘削の高い櫓が組まれ、大工事中だ。観音崎の近くの海岸に温泉が湧き出るなどとは予想もしなかったが、現代の土木掘削技術の進歩は目覚ましい。千メートル余も掘削すれば日本全国何処でも、可なりの確率で温泉を掘り当てることが出来るらしい。

 地中のマグマ、地熱の恩恵を受けた温泉は、日本人誰もが恋焦がれるが、地熱の熱源が何に拠るものなのかご存じの方は少ないようだ。地球がビックバンで生成された四十六億年前から、地球には自然に核崩壊する数多くの元素が存在するが、それら元素の崩壊時に放出される熱源が、マグマの高温を維持しているのだ。その主な元素は人体に無くてはならないカリウム(K)だ。

 皆さんは放射線を恐れているが、地球に満ち満ちている放射線の恩恵を受けて、地球上に人類が産まれ、自然の放射線環境下で育った植物や家畜は、押し並べて放射能物質をもっているのだ。それらを食べている私たち人間も、一人当たり7000ベクレルの放射能を体内に持った「放射能人間」なのだ。人間は、自然の放射線を遮断した世界では生きて行けない現実を、教えてこなかった教育の欠陥を、改めて問い直したい。

 人間が放射能の恩恵によってもたらされた「温泉」に恋焦がれるのは、地球上に生かされてきた本能的な反応かもしれない。このように考えれば、馬堀海岸に温泉が湧き出す日が、待ちどうしく思われる。
「茅 ・ちがや 」の群落が風に波打っているのは、温泉を手招きしているのかもしれない。



            おしなべて靡ける茅の手招きを

            観れば知るかも初夏のそよ風


            温泉を掘るてふ櫓の高くして

            茅の原の消える日哀しも


            やがて涌く馬堀の出で湯に足浸し

            たれ思ふらむ宇宙の営みを


            ちはやぶる神の御業か愕きは
             
            吾が住む郷(さと)に出で湯汲むとは






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