梅雨が明けて蝉が鳴き出すと、百日紅が房花を咲かせる時節を迎える。
遠くから百日紅を写すのは、作品の良し悪しは別として、さほど難しくもないが、花を大写しにしようとすると、これが意外と難しい。百日紅は細い枝先に花を付けるので、ネライを定めていると風がふいて、ふわーっと枝が揺れてファインダーから逃げ出してしまう。やっとの思いでシャッターを押しても、ぶれてピンボケになったり、ど素人のカメラマンは甚振られて、散々であった。
子供の頃のこと、「この木はな、木肌がつるつるで滑り易い。木登り上手なお猿さんも、滑って落っこちるので『サルスベリ』と呼ばれているそうじゃ」と、親父様の話を聞いた記憶がある。
屋敷に植わっていたリンゴや柿の木などは、木登り遊びの格好な対象であったが、虚庵居士の生家に百日紅の木は無かった筈だ。よそ様の庭木にも登りかねない「腕白息子」に、『サルスベリ』を見ながら「登るでないぞ」と諭してくれたのかも知れない。
久方に「父ちゃん」の声を聞きしかな
いがくり頭を撫でる手大きく
チリチリノ花びら寄り添い咲く花の
枝の向こうに夏蝉ぞなく
遠慮がちに鳴く蝉の声途切れつつ
百日紅の枝揺れにけり
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