「うつろ庵の鳩ポッポ」の子育ては、悲惨な結果になった。
未だ明けやらぬ早暁、母鳩の号泣に虚庵居士は目が覚めた。
「グッグーゴーゴー、グッグーゴーゴー、グッグーゴーゴー・・・・」
抱卵を交代する際に交わした、ごく控えめな優しい合図の鳴き方とは打って変わって、深い悲しみのこもった号泣だ。外に出て、母鳩の鳴き声を辿ったら、近くの電柱の一番高い電線に止まり、巣を見降ろして、辺りを憚らず泣き続けていた。
やるせない思いに沈んで、虚庵居士はリビングに腰を下ろし、呆然と鳩ポッポの巣を眺めていた・・・。
母鳩は30分程も泣き続けたであろうか・・・。
やがて母鳩は、巣に戻ってきた。
巣の縁に佇み、首を傾げて、冷たくなって眠る我が児を見つめていた。
どれほどの時間が経ったろうか。
随分長い時間に感じられたが、ごく僅かな時間であったかもしれない。
母鳩は、我が児を抱こうとはせずに、巣を飛び去った。
・・・・・・
気が付けば、何も手が付けられない一日であった。
鳩ポッポの悲しい鳴き声が、今も聞こえている・・・。
「グッグーゴーゴー、グッグーゴーゴー、グッグーゴーゴー・・・・」
ははばとのこころをしぼるなきごえに
ひたんにくれぬるじじとばばかな
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