小高い尾根の上に立つマンションを目指して、息を切らしつつ散歩した。
体を鍛えていないので、坂道や石段がチョット続くと、膝が重くなり、息切れもするようになった。加齢による体力の衰えだとは認めたくないのだが、厳しめの散歩コースでは、現実を認めざるを得ぬようだ。
坂道でペースダウンした虚庵居士を尻目に、家内は坂道では元気が出て、ヒョイヒョイとペースが上がるのが癪の種だ。「僅かばかりの年齢差でも、これほど体力の差が出るのだろうか」などと、ブツブツ呟きつつ後を追う虚庵居士であった。
坂道がかなり続くと、先にたってピッチを上げていた家内が道端の大石に腰を下ろして、虚庵居士の到着を待っていた。何のことはない、ピッチを上げすぎて息切れが激しく、虚庵居士が到着しても腰を上げられない状態であった。山登りの要領で、一歩一歩の足運びをゆっくりと、自分のペースを保つと意外に長持ちするのだ。そんな講釈をしながら、尾根の上のマンションに辿り着いた。
それにしてもマンションの住民は、何と健脚なことかと感服だ。
一息つきながら、マンションの裏手に回ったら洒落た公園に出た。
小学生の女の子が二人で遊んでいたが、虚庵夫妻をみて「こんにちは」と元気よくご挨拶をしてくれた。公園の植え込みの「馬酔木」が、女の子の胸に飾ってやりたいような風情で、可愛らしく咲いているのが印象的だった。
尾根の上から別のルートで平地に下りようと、マンションの住民に道を尋ねたら、「下の駅までエレベータがご座居ますのよ」と案内して下さった。何のことはない、坂道を息を切らして上り下りせずとも、彼らは日常的に文明の利器を使って、いとも簡単に尾根上のマンションに往き来しているのだ。住民の健脚に感服したのが、何か裏切られたような気分であったが、勝手な思いは住民に失敬というものだと反省した。
息切らせ坂道上りぬ尾根の上の
マンション目指す山登りかな
マンションの住民たちの健脚に
感服しきりのじじとばばかな
公園に遊ぶおみなごじじばばに
「こんにちは」との 弾む声かも
おみな児の挨拶弾めば公園の
馬酔木の花も鈴を鳴らすや
帰りぎわに道を尋ねば意外にも
エレベータ召せとの応えに魂げぬ
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