「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「小菊の季節 - その1」

2013-11-06 01:39:01 | 和歌

 寒冷地の11月は、まさに霜月そのものだ。日の出前の寒気は、地表近くの湿気を一気に霜に変えて厳しい朝を迎える。信州・諏訪盆地で育った虚庵居士の子供の頃は、こごえる指先に息を吹きかけ、手を擦り合わせたものだった。

 横須賀の「うつろ庵」周辺は温暖な気候ゆえ、霜は殆んど見かけないが、霜月には「小菊の季節」迎えて、花と香りを愉しませて呉れる。

 磯や海岸に沿ったプロムナードには、磯菊が黄色の莟を膨らませ、綻び始めた。 小菊に限らず、丹精込めた菊花の展覧会も彼方此方で開催されることだろう。時間的に余裕があればそんな菊花展を観覧したいものだが、忙しない毎日を過ごす虚庵居士は、散歩の途上で小菊に出会うのがせめてもの愉しみだ。

 小菊も丹精込めた鉢植えの菊も、或いはまた切り花の菊花も、共通するのは独特の香りだ。虚庵居士の実家はかつて、庭一面に菊を栽培していたので、まさに菊の香の中で育った子供の頃であった。

 小菊の花に出合い、その香りに亡き両親や長兄夫妻に思いを致し、しばし瞑目して故郷を懐かしむ虚庵居士であった。




           椰子の木を見上げる子等か磯菊の

           つぼみは顔寄せ 何ささやくや


           磯菊のつぼみは寄り添いへし合うに

           その声聞かばや耳をそばだて


           吹き荒ぶ汐風気にせず綻ぶに

           歩みをとどめて暫し語らむ


           磯菊に遅れてならじと稚けなき

           つぼみに先がけ小菊は咲くかな


           咲き初むは 黄花赤花 入り混じり  

           自然の世界は分け隔てなく


           菊の香の気品に満ちた香りかな

           瞑目すれば故郷おもほゆ







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