広い野原には、「荒地花笠」の花がひっそりと咲いていた。
かなりの数の荒地花笠の群落であったが、もともと華やかさなど全く見られない野草だから、咲いている小花すら全く目立たなかった。
何年か前に野草図鑑で花の名前を覚えてからは、時には近寄って覗き込む虚庵居士だ。どの辺りの花をカメラに収めようかと見渡していたら、「ゴマダラカミキリ虫」が一匹、「荒地花笠」の花にとまっているのが目にとまった。
カミキリに気付かれないように、そっと近づいてカメラに収めた。
触角がピンと立って、如何にも逞しそうだが、よ~く観察すると手足を花笠に預けて寛いでいる風情だ。至極のんびりと、昼寝をきめ込んでいるのかもしれない。
彼を正面から写そう、顔の表情は如何にと場所を替えたら、途端に彼は活気づいて攻撃的な姿勢をとった。手足を盛んに動かし、触角を振りかざして「いざ戦わん」との気概だ。 元より危害を加える心算はなかったが、彼の攻撃的な動作で、荒地花笠の茎は大きくゆらめいた。
ほんのひと時の「ゴマダラカミキリ虫」との出会いであったが、たっぷりと愉しませて貰った。彼もまた、虚庵居士以上にこの出会いを楽しんだに違いあるまい。
野に咲ける荒地花笠写さむと
近くに寄ればカミキリ虫かな
背の高き荒地花笠に身を任せ
寛ぐ風情ぞ昼寝ならむや
手も足も花笠小花に預けるは
心地好げなるゴマダラカミキリ
カミキリの顏の表情写さむと
近くに寄れば身構える彼
触角を振りかざしつつ手も足も
盛んに動かし「いざ戦わむ」かな
背の高き荒地花笠揺れにゆれ
ゴマダラカミキリ武将の面影
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