遠くから見たら白い蝶が舞っているかのように、シャレた花が風にゆれて咲いていた。
たまたまそのお宅のご婦人がいたので、名前を尋ねたら「横文字の名前でしたが・・・」と、思い出して貰えなかった。横文字ではイメージが湧かないためであろうか、年齢には関係なく、誰もがなかなか覚えられないようだ。
薄紫の首を曲げて俯き加減に咲く姿は、乙女の恥らう風情を思わせるが、下から覗き込むと、白い花びらのつけ根部分だけが紫紺で個性的だ。カメラを構えたら、後ろから手が伸びて、ご婦人は萎れた花をそっと摘み取ってくださった。一瞬、花がゆれて仄かな芳香が漂った。
帰宅して調べたら名前は「アシダンセラ」、グラジオラスによく似た球根と知れた。
エチオピア原産とある。東京オリンピック・マラソンで金メダルの栄誉に輝いたアベベ選手の、あの哲学者を思わせる彫りの深い顔と、愁いを帯びた眼が思い出された。
俯いた顔を覗くなんて 失礼ね!
乙女のデリカシ わかんないの!
同郷の誇りの先輩アベベさんを
尊敬してるなら 許してあげるワ!
エチオピアの乙女の花の呟きは
耳に届きぬ写真を見れば
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