「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「線路端の花小鉢」

2013-12-20 20:03:26 | 和歌

 虚庵夫妻の散歩コースは、住宅街のほゞ中ほどの遊歩道と、海岸の椰子並木の プロムナードを組み合わせるコースが多いが、時には気分転換に旧市街の路地裏散歩をも愉しんでいるこの頃だ。過日は路地裏散歩を辿る途上で、隣町の線路脇の小道に紛れ込んだ。

 線路端の住居は電車の騒音がサゾヤと、他人事ながら心配だ。静かな日常生活や睡眠が妨げられるのは虚庵居士には堪え難いが、住民は意外と慣れっこになっていて、気にせずにお暮しなのだろうか。

 そんな在らぬことを考えながら歩いていたら、線路の柵に掛けた数々の花小鉢が目に入って、住民の逞しさに愕いた。



 コンクリート製の細い柱と横桟を組み合わせた柵には、針金を巧みに使って様々な花小鉢が飾られていた。孟宗竹を半割にしたお手製の花鉢もあって、線路の柵を使った花壇には、住み人の思いが凝縮されていた。

 狭い路地は簡素な玄関に直接つらなり、花小鉢の向こうは線路だ。
住居の至近距離を猛烈な勢いで電車が走れば、騒音も然ることながら振動もかなりであろう。未だ明けやらぬ早朝から深夜まで、毎日の上下の電車本数は相当なものであろう。達磨大師の修行をも遥かに超える修行を、生涯に亘って続けて居られるからこそ、堪えられるのであろうか。「住めば都」との諺があるが、お住まいのご家族の忍耐強さには感服だ。

 玄関前の線路柵の花小鉢に、総てを超越した住み人の思いが偲ばれた。




           歩み来れば隣の街の路地裏の

           線路の脇の小道を辿りぬ


           線路際の住居に暮らす人々は

           如何に堪えるや電車の騒音を


           あれこれと思いをめぐらし線路端の

           小道を辿れば柵には小鉢ぞ


           コンクリートの簡素な柵に吊るしたる

           花の小鉢に愕かれぬる


           住み人は狭き小路に思い凝らし

           線路の柵に花鉢吊るしぬ


           騒音と振動に耐える毎日は

           花の小鉢が総ての救いか







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