薔薇ほど「やんごとなききわ」に捧げられ、その名をとどめる花は他にあるまい。
今回ご紹介するバラなども、その典型だ。その類を漁れば、たぶん数限りない種類が数えられることであろう。この世に産まれ出でて、歴史にその名を残すのは並大抵のことではないが、薔薇の名前と共にその名を後世にとどめる人びとに、ひと時の思いを馳せてみた。
左: ジュビレ・デゥ・プリンス・ドゥ・モナコ
右: マダム・サチ
”Jubile du Prince de Monaco” は、モナコ公国元首レニエ三世大公の即位50周年に捧げられた薔薇だ。ハリウッド女優であったグレース・ケリーは、24才でモナコ皇太子レニエ公と世紀のロマンスを実らせ、世界が熱狂してから早くも半世紀ほどが経た。お二人の結婚で、日本の皇居の2倍ほどの国土のモナコは、「世界の社交場」に生まれ変わったが、ヘアピンカーブでの事故で彼女は52才の生涯を閉じた。彼女に献呈された薔薇「プリンセス・ド・モナコ」もこの薔薇も、紅白ニ色に塗り分けられた「モナコ国旗」をイメージしたものであろう。
レニエ三世大公とはどんな男であったか? グレース・ケリーの夫君であったことは周知の事実だが、
インターネット検索では薔薇の紹介は数限りなくヒットするが、彼自身に関する記述には遂に辿りつけなかった。薔薇に己の名前が付けられたのは名誉であるが、本人に関する記録が見当たらないのも、また寂しいことではないか。
「マダム・サチ」は、1982年に来日したフランス大統領ミッテランが、当時の鈴木善幸総理の「さち夫人」に贈ったことに由来するバラだ。
訪問先の国の総理夫人に、純白のバラを捧げたミッテランのはからいは、粋と申すべきであろう。
バラの花一輪の効果は計り知れない筈だ。我が国ではこのところ短命な政権が続き、首相達はそのような心の余裕すら持てなかったようだが、いやしくもわが国の首相の椅子に座る男であれば、その程度の心の余裕と配慮ができる器であって欲しいものだ。何も「将を射んと欲せば・・・」などと、くだらぬ計算をする必要はない。ほんのチョットした気配りができるか否かが、やがては国の外交をも左右する。どこぞの国の首相だった男は、トップ会談で ”Trust me!” などと発言したそうだが、信頼とはそんな軽い言葉で得られるものでもあるまい。
紅白の国旗に滾る思い託し
薔薇は伝えぬ世紀の恋を
かれ彼女 滾り燃え立つひと時の
命のあかしを薔薇にとどめて
バラ一輪捧げる男の気配りを
君は笑ふや こころのゆとりを
左: ビクトル・ユーゴー
右: ザ・ダークレディー
フランスの文豪「ビクトル・ユーゴー」に捧げられた、深紅の大輪だ。
『レ・ミゼラブル』など、幾多の名作を残した彼であるが、数々の名言にも注目が集まっている;
『大きな悲しみには勇気を持って立ち向かい、
小さな悲しみには忍耐を持って立ち向かえ。
一日の仕事を終えたら安らかに眠れ。あとは神が守ってくださる。』
『男が臆病になり、女が大胆になる時、本当の恋が始まる。』
さて、諸君はどの様な名言をお残しかな・・・?
名にしおうかの文豪の名をこのバラは
知るよしもがな ひたすら咲くに
文学を世に問ふ人あり言葉なく
己を咲かす薔薇もありけり
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