「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「秋茗荷」

2011-10-05 00:56:05 | 和歌

 「うつろ庵」の茗荷に季節外れの花が咲いた。

 狭い裏庭が茗荷畑になっていて、今年も初夏から盛夏にかけては沢山の茗荷がとれて、夏の冷麦には、無くてはならぬ薬味として重宝した。
「家事の序に、茗荷畑を覗いたら見つかったのよ」と言いつつ、虚庵夫人がまだ土のついたままの二つを、大事そうに手に捧げて見せに来てくれた。秋台風を過ぎて涼しくなってからの茗荷は珍しい。

 茗荷は地下茎をどこまでも延して、思わぬ処に芽を出してかなり背丈も高く伸ばす精力的な植物だ。そんな茗荷だが食用として人気のあるのは、地下茎から地表面すれすれに顔をだす莟の部分だ。この莟から地表に淡い黄色の瑞々しい花を咲かせるが、気の毒なことに茗荷の花を愛ずる人はごく少ないようだ。茎と葉がかなり茂った足元に咲くので、殆ど人目につかぬためであろう。ごく薄いフリルの花びらが水気を帯びて、極めて繊細で短命な花だ。そのような花を咲かせるために、ふくよかな莟の萼の部分は、かなり肉厚で水気をたっぷり含んでいる。そのような莟だからこそ、食用の薬味として人気があるのであろう。

 かつて沢山とれた二年程前にも「茗荷」とのタイトルで、写真と一文を掲載したが、この茗荷をお土産に下さったNご夫妻宛に、絵葉書に仕立てて郵送したら、早速折り返し電話があった。

 茗荷がとりもつ絵葉書と久方ぶりのお電話で、懐かしい交流が甦った。




 

          香り立つ茗荷を摘めば偲ばるる

          新居を祝いしお心くばりを


          絵葉書に仕立てて歌添え送りなば

          懐かしき声電話に聞くかな


          既に早や落ち葉降り敷く秋なれど

          命を惜しむや花咲く茗荷は


          吾ぎ妹子(もこ)は土の茗荷を捧げ持ち

          目にも声にもよろこび溢れて







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