散歩をしていると、馥郁としたジャスミンの芳香が漂ってきた。
程なく、門扉の脇に咲き乱れる「羽衣ジャスミン」が、眼の前に現れた。
花数が少なければ、ジャスミンの芳香は得も言われぬが、これ程に群れ咲くとその芳香には、大勢の
美女に囲まれた「初心な男」の様に、圧倒され、むせ返り、尻ごみすることになる。
「美女とはしっぽりと濡れたいものだ」などと、大昔の男は粋な「せりふ」を吐いたが、香り高い
美女もジャスミンも、数が多いのは必ずしも頂けないなどと言うのは、勝手な言い種だろうか。
この花には、素馨(そけい)との別名もあるそうだが、まさに漢字文化のなせる命名と言わんか。
それにしても、むら花の織りなす絵模様は、祝言に着る緞子の打掛を思わせる見事なものであった。
彼方よりふくいくとして香りくる
かおりをたよりに花をたずねむ
あゆみ行けばジャスミンの香はいざないて
むら花咲きたつ門辺にいたりぬ
紅のつぼみとむら花織りなせる
素馨の打掛は息女を祝ふや
白妙の素馨は咲くかも漆黒の
夜のみそぎに紅を落して
紅の莟の色は昇華して
白妙のはな 馨る素とや
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