リラの花を観ると、札幌の大通公園が偲ばれる。約400本ものリラの木が植えられていて、晩春から初夏にかけての花と香りの饗宴は、誠に羨ましい情景だ。
横須賀では四月下旬ころ、虚庵居士の背丈程度の木に花を付けていたが、札幌で咲く沢山のお仲間に合わせて、この時期に掲載することにした。
「リラの花咲く頃」との昔の歌謡曲の一節が、ふと頭に甦って来た。
子供の頃、ラジオから流れるこの歌謡曲を聴きつつ、見知らぬ「リラの花」をあれこれ思い描き、想像を巡らせた事を懐かしく思い出した。
ヨーロッパの香りの文明は歴史が長いが、リラの花も香水の原料として使われることで有名だ。花の香りを抽出して香水に凝縮させ、日常生活の中で香りを楽しむのは、豊かな生活の証しでもある。かつて日本でも香を衣に焚き込み、香りだけでも人の識別が出来る程の、繊細な文明が確立したが、慌しい日常生活に追われる現代では、及びもつかぬ世界だ。僅かに一握りの人々に香道が受け継がれているが、茶道にせよ香道にせよ、日常生活の中で生かしたいものだ。
残念ながらリラの花は手に入らぬので、「うつろ庵」では「薔薇の香」を愉しむこの頃である。拾い集めた薔薇の花びらを乾燥させ、乾燥ポプリとして部屋に置いてあるが、かなり長い期間に亘って芳香を愉しませて呉れる。
ポプリの作り方を更に勉強して、醗酵ポプリでより長く、より爽やかな香りを作りたいと念じている。試みに半乾燥のポプリに、アルコールを噴霧して醗酵を促したら、それだけでもかなり香りが佳くなった。来年に期待したい。
「リラの花」を掲載するに際し、例によって花図鑑を念のため調べた。
リラ・Lilas(仏)、ライラック・Lilac(英)は何方もご存知であろうが、珍しい和名「紫丁香花・むらさきはしどい」を見つけた。リラはヨーロッパ原産で、日本に輸入されてから まだ日が浅いが、「丁香花・はしどい」は日本にも自生する香りの清々しい花木で、紫丁香花より一ヶ月ほど遅れて咲くという。何処の山であったか、白く煙って咲く丁香花を観た記憶が甦ってきた。
清しくも香り漂う裏道に
リラひそやかに咲きにけるかも
歩みつつ古き歌謡の一節を
口ずさむかなリラの花観て
リラの花手に入らずば代替えに
薔薇のポプリに思いを託しぬ
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