「うつろ庵」のツツジの根元に、「レインリリー」が首をもたげて、優雅な花をつけた。
種を蒔いたのでもなく、株を植えたのでもないが、何時の間にやら芽を出し、水仙に似た花芽をニ・三日の間にのばして、あっと言う間に花を咲かせた。予想だにしないところに見事花が咲いて、虚庵居士夫妻は愕きつつも大喜びであった。
「レインリリー」の花の命は短いが、花の後にはかなり大きな実を結ぶ。やがて莢が割れると、中には
黒光した種が顔をのぞかせ、小鳥たちにとっては又とないご馳走となる。こうして、小鳥たちの置き土産が、思いもかけない「レインリリー」の花のプレゼントに変身する。
「うつろ庵」にはこのツツジの根元の他、何年か前から二つの平鉢にも根を下して、毎年花を愉しませてくれている。植え替えもしてないが、球根はかなり逞しく育っているに違いあるまい。無精者には打って
付けの「庵の同居人」として、ご滞在願っている。毎年の、梅雨時のご挨拶が愉しみだ。
この花は花色も咲き方も、或いは花の大小も色々あるようだ。加えてその名も学名の「ゼフィランサス」のほか、「サフランモドキ」「玉すだれ」などとも呼ばれ、それだけ多くの皆さんに可愛がられていると云う
ことであろう。
虚庵居士は自分で名乗った雅号であるが、本名のほか数えてみたらかなりの数の呼名が想い出された;中学生頃までには「ヒロちゃん」「ひろくん」「博士」「チョロ」など四つを数え、仕事に就いてから頂戴したのは「Hydrauric」「H君」「涓涓」などなどだ。愛称のみならず、敬称も蔑称も代名詞もある。それぞれにまつわるオモロイ話も尽きないが、ご紹介は別の機会に譲る。
突然の優雅な花の挨拶に
愕きやがて笑顔の妻かな
うす色の縁どり床しき花なれば
短きいのちの今日を尽くすや
黄金なる蕊の花粉の乱れ散るは
蜂が結びし命の名残か
実を結び小鳥を介して何処にか
やがてこの子の芽吹きを祈らむ
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