色とりどりの立葵が咲いていた。
入梅と共に咲き初め、「頂上まで咲き昇ると梅雨が明ける」と、古来言い伝えられてきた立葵だ。現代の気象観測にもとづく天気予報など無い時代の、昔の人々にとっては、貴重な梅雨の目安であったろうと思われる。
記憶力の悪い虚庵居士であるが、立葵の咲き昇る時期は、確か梅雨明け頃だったと記憶する。梅雨が明けて真夏を迎えると、立葵の花は灼熱に耐えられず、たちまち萎んで花時を終えることになる。頂上まで咲き昇ることと、灼熱に耐えられず花時を終えることは、異なった事象ではあるが、タイミングとしては殆ど同時期だから、立葵に託した古人の言い伝えは、自然を正確に見届けたものと云えよう。
この写真を写したのは先週だったろうか、頂上部分にまだ莟みを残していることから、梅雨明けにはまだ間がありそうだ。正確な季節情報をもとに商売をするのでなければ、日常生活には凡その季節感で十分だ。 そんな意味からも、立葵は程よい 「花時計」だ。
華やかに咲き昇るかな立葵の
色とりどりに競ふが如くに
ひたすらに空を目指して背を伸ばし
陽を恋ひ咲くかな 立葵の花は
入梅と共に咲き初め頂きに
咲き昇りなば梅雨明けとかや
立葵をいにしえ人は花時計に
見立てて頼るや梅雨の目安に
花あれば花と語らひ花を頼り
花との暮らしを雅と云うらむ