稀にしか歩かない、山中の径を散歩した。
住宅街を抜けて、次第に道路の傾斜が急になると、散在していた民家も殆どなくなって、山中の径は鬱蒼とした林につながっていた。さらに進めば、山の尾根を迂回するかのような平坦な径の脇に、木こりが二人、腰を据えて休んでいた。
「こんにちは! ご苦労さまです!」 と声を掛けたら、爽やかな返事につづいて、
「路の左側が崩れかかっています。足元に気を付けて!」 と、笑みつつの丁寧な応答だった。
暫らく進んだら、ご忠告の崩れかかった箇所にさしかかった。
右側を注意深く通過した。その先の山路の脇に、巨木の切り株が見つかった。
先ほどの、二人の木こりが伐採した跡に違いない。
巨木の切り株は、2ヵ所だった。
感心なことに、これだけの巨木を伐採した後では、太い幹や枝葉などは大変な量だったろうが、見事に片づけられていた。
ゴルフ場などですら、コース周辺の大木を伐採した後始末は大変なので、殆どは谷底に積み重ねて放置するケースが多いが、それに引き替え、ここの伐採の後始末はお見事だった。クレーンやトラックなどの重機は一切使えない山中では、作業の全てが、彼等二人の人力によるものだったに違いない。 彼等の爽やかな応答と、木こりとしての誠実な仕事ぶりには、相通じるものが観られた。
「一事は万事」 との古語があるが、将にその通りだと訓えられた。
山中の径に到れば登り坂の
汗も吐息も 治まるはなぜ?
尾根を避け迂回するらし山径は
歩めば木漏れ日あまたを語りぬ
山路にどっかと腰据え休息の
木こりに出合いぬ こんにちは! ご苦労さん!
山路は崩れているから足元に
気を付けなされと 木こりのご配慮
山路の脇の巨木の切り株は
彼らの汗のしるしなるらむ
切り倒した巨木の幹も枝葉すらも
後の始末に愕かれぬる
いと細き山路の伐採 ご苦労は
如何ばかりなむ 笑みには見えずも
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