花時をとうに過ぎた紫陽花が、真夏の太陽に晒されて花柄が枯れていた。
虚庵夫人は旅先の無聊を慰めようと、枯れた花柄を一つづつ丹念に手でとり始めた。気の遠くなる手作業だが、その傍らに佇んでそれとなく手元を見ていたら、紫陽花の残り花があることに気が付いた。
乳白色の蕾みに鴇色が仄かに色付いて、何とも初々しい風情だ。
日本の紫陽花の花時は梅雨の頃ゆえ、6月から7月頃であるが、真夏もやがて終わろうと云う8月下旬に、これほど初々しい紫陽花にお目にかかろうとは思いもよらぬことであった。
さらに反対側に回ってみたら、新たに薄い群青色の花玉が見つかった。
覆いかぶさるような枝をそっと脇に寄せたら、爽やかさが一段と際だった。虚庵夫人の花柄摘みに付き合ったお陰で、素晴らしい残り花に出会えることができた。
紫陽花の
花時すぎて花柄を
打ち捨てたるは見苦しと
旅の無聊を慰めて
わぎもこ手ずから摘み初めぬ
傍らに立ち眺むれば
咲き残りたる花玉の
我を見あげるひとつあり
未だ稚きおみなごの
咲きに初めにしその風情
花のこころをとく知るや
ああ 仄かに染めるは
ときめくこころか
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