「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「姫蔓蕎麦と金平糖」

2014-01-09 00:43:16 | 和歌

 「姫蔓蕎麦・ひめつるそば」を見ると、祖父の膝に抱かれて食べた、甘い砂糖菓子の金平糖を思い出す。

 太平洋戦争の末期の頃、まだ幼児だった虚庵居士は、母に手を引かれて祖父の家に時々遊びに行った。当時は総てがお国のため、戦地への供出等で、お菓子や飴等は殆んど手に入らない貴重品だったが、祖父と共に食べた金平糖が懐かしい。

 いま思えば、信州諏訪で巨大な倉庫を構え、繭・生糸問屋を営んでいた祖父は、孫達のために工面して、金平糖を特別に手配していたに違いあるまい。

 仏壇の前が祖父の定席だったが、後の茶箪笥の小引き出しから金平糖を手掴みで取り出し、幼児の手に余る程を下さった。 そんな懐かしい金平糖に、「姫蔓蕎麦」の花は形も大きさも、そして色合いもそっくりだ。

 当時の祖父の年齢を遥かに超える虚庵居士だが、「姫蔓蕎麦」の花を観れば何時の間にか、金平糖を食べつつ涎を垂らす、幼児の気分になるから不思議だ。


           懐かしき

           幼児の頃の砂糖菓子の

           金平糖を偲ぶかな

           母に連れられ手を引かれ

           遊びに行った祖父の家

           膝にまたがり口にする

             金平糖に よだれをたらしぬ





           蔓草の細きうなじに玉花を

           幾つか かかげる 姫蔓蕎麦かな


           近く見れば粒々それぞれ小花かな

           あまたの小花が珠をなすとは


           それぞれの小花は未だ口つぼめ

           一つ二つの 年始の綻び 


           何時の日に小花は咲くや珠をなして

           その日を観まほし近くに寄り添い







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