テラスの前の花壇に、「紫蘭」が咲いた。
元々ここには芍薬が植わっていたが、花好きな虚庵夫人は「とりあえず」と言いつつ、あれもこれもと仮植えしたものが次第に繁殖した。今では色々の草花が入り混じって、それぞれが花時を違えて咲くので、「うつろ庵」のテラスは格好のブランチの場所を提供してくれる。早春の水仙から始まり、ムスカリ、ヒマラヤ雪の下、ブルーベリーなどが続き、今やこうして「紫蘭」のお出ましと相成った。
花壇の家主だった芍薬は、文字通り次第に小さくなって、紫蘭の葉陰にかろうじて存在が認められる程度だ。テラス前のほんの小さな花壇だが、ここには花達の織りなす折々の物語と、かなり厳しいサバイバルも見られる小宇宙だ。
たおやかに花茎ゆれる紫蘭かな
テラスにいでて妹と語れば
旺盛な生き抜く力を君みせて
狭き花壇を紫蘭は占めにし
斯くばかり華やぐかんばせ伏せるとは
紫蘭のはじらひはかりかねつも
なにゆえに俯き咲くかな手弱女の
紫蘭のこころを如何に汲まばや
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