「うつろ庵」の生垣の間から、「台湾連翹」が枝をせり出して、花を付けた。
珊瑚樹の生垣は、少しでも風通しをよくしようと丹念に枝を剪定してあったので、台湾連翹は苦も無く 生垣を潜り抜けた。生垣の根元のフラワーベルトには、大紫のつつじが植えてあるがこれをも乗り越えて、枝先は通りまでせり出した。
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「うつろ庵」の前の通りは住宅地の中の道路ゆえ、車も人通りも疎らなのをよいことに、花枝の我が侭を暫しの間お許し願うことにした。 案の定、道行く人々は足をとめて「台湾連翹」にご挨拶したり、ケータイ電話のカメラに収めて行く娘さんもいて、皆さんに評判がよさそうだ。
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驚くことには、花数が増えて枝先が重くなったら、道路にせり出していた台湾連翹は自ずと首を垂れて、道行く人々のお邪魔にならぬ程度の姿に納まって来たことだ。 「うつろ庵」の住人の身勝手を、「台湾連翹」自らが首を垂れてお辞儀し、許しを乞うかのよのうに見えるではないか。
「あるじが剪定すべきところ、我が侭な男をどうかお許し願います。斯くの通りお詫び申し上げますによって、今暫し、この花をお楽しみ下さい。間もなく、あるじも身勝手さに気づき、私めの枝を剪定してくれるでしょうから・・・」
などと、ひたすら平身低頭の風情だ。
甲子園大会が終わったら健児らの健闘を湛えて、台湾連翹の花を刈り取って彼らに捧げたい。
生垣をくぐり抜けにし枝先の
つぼみの花房 風に揺蕩う
稚き莟の房は風に舞ふに
雅に台湾連翹咲きませ
さえだ延べて台湾連翹ささやくや
道行く人の袖に触れつつ
何時にしか台湾連翹枝垂れ咲くは
主に代わりてこうべを下げるや