川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

1928年の放射線年間許容量は700mSv!!

2011-06-03 01:35:04 | ひとが書いたもの
レイト・レッスンズ―14の事例から学ぶ予防原則レイト・レッスンズ―14の事例から学ぶ予防原則
価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2005-09
これは予防原則バリバリな本。ヨーロッパ環境省(EUの正式な機関)が発表した、予防原則のためのリポートの翻訳なのだから、当然。

で、第3章が放射線についてで、非常に興味深い。
というのも、放射線の健康影響は時間と共に認識され、その都度、被曝の限度が切り下げられてきた歴史でもあるから。


本当に、20世紀前半の放射線への対応は、非常に大らかで、妊婦の骨盤測定と称してX線写真がとられたり、子どもの靴のフィッティングのために、靴屋でX線が使われたりしていたとか。

1928年に提案されたある基準では、人が年間に浴びて良い放射線の限度は700mSvだった(当時シーベルトという単位はなかったが、換算すると、という意味)そうだ。

その結果、あとから見てみると子どもの白血病などの増加につながったことが、著名なアリス・スチュワートの研究でわかり、最初はうさんくさく見られつつ、けっきょくは認められていった。(ちなみにスチュワートは、評価の割れるECAAの初代チェアマン)

前後して、ICRPができて、閾値なしのモデルが採用され後でも、切り下げは続く。
依拠する広島・長崎の大規模調査は、急性反応だけではなく、長期的な発がんリスクが増加することを、反駁の余地なく明らかにしたけれど、それに基づいて弾き出されるリミットもどんどん下方修正されていった。
1977年の時点から1990年にかけて、被曝限度は、4分の1から5分の1までに切り下げられたとか。

もはや、予防原則という言葉が空回りしてしまうほどの被曝を覚悟しなければならない地域を持つ我々としては、今これを読んでもかんともしがたいのだが、歴史を知っておくことは大事という意味で紹介。

ちなみにこのリポートの第二部が今、準備されていて、水俣病の章がもうけられるそうです。

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