この写真は千葉・和田浦のツチクジラの解体。エントリとは、直接の関係はナッスィングです。
で、日経ウーマンオンラインの連載コラムで、ザ・コーヴでも話題になった、イルカ肉の水銀値について、軽く解説しました。
個別のニュースは報じられているけれど、あまりまとまったのを見たことがなかったので、あくまでファクトベースで言えることを言ってます。
こちらをどうぞ。
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20100818/108208/?P=1
ただ……これを書く時、編集者と少し議論したのは、ネット上で散見される「水銀の毒性をセレンが中和する」とか、「母親が水銀値の高い魚を食べた方が、子どものIQがよくなるという研究もある」といった、どちらかというと水銀の有害性を小さく印象づけようとする話について解説を入れ込むかという点。
でも、これは、あくまで散見される程度で、あまり広がってもいないように感じたので、書きませんでした。
かなり煩雑になっちゃうし。
だから、ここで本当に軽く解説。
セレンが水銀の毒性を中和することについては、Pubmedの検索をしてみるとかなり出てきます。
動物実験では、かなり効果有りとも。
ただ、疫学研究が見付けられないんですよね(あったらおしえてください)。ひっかかるのはほとんど毒性学方面の研究。自然な喫食の中で、毒性抑制効果がどの程度働くのか明らかにしようとした疫学研究は現在のところなさそうです。というわけで、有望だけど未知数と考えた方がいいでしょう。
ちなみに、イルカ肉は魚に比べても、特段、セレンが多いわけではないそうです(ネットで書かれていた知識(笑))。
あと、「母親が水銀値の高い魚を食べた方が、子どものIQがよくなるという研究もある」という話は、大元になったアメリカのFDAの研究の一部を意図的にミスリードする形で紹介しているようです。
思い切り簡単に言ってしまうと、有機水銀の神経系や心臓への害を所与のものとして、しかし、魚食がもたらすほかのメリットとどの程度釣り合うものなのかを見定めるための研究から、「水銀値の高い魚でも気にせずに魚をたくさん食べている方が、水銀の害を上回る魚食のメリットがあった」というひとつの結果のさらに一部分だけを取り出したものです。
ツッコミがありましたら、その文献など示しますが、きょうはここまで。(ね、コラムに書くには煩雑でしょう?)
で、日経ウーマンオンラインの連載コラムで、ザ・コーヴでも話題になった、イルカ肉の水銀値について、軽く解説しました。
個別のニュースは報じられているけれど、あまりまとまったのを見たことがなかったので、あくまでファクトベースで言えることを言ってます。
こちらをどうぞ。
http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20100818/108208/?P=1
ただ……これを書く時、編集者と少し議論したのは、ネット上で散見される「水銀の毒性をセレンが中和する」とか、「母親が水銀値の高い魚を食べた方が、子どものIQがよくなるという研究もある」といった、どちらかというと水銀の有害性を小さく印象づけようとする話について解説を入れ込むかという点。
でも、これは、あくまで散見される程度で、あまり広がってもいないように感じたので、書きませんでした。
かなり煩雑になっちゃうし。
だから、ここで本当に軽く解説。
セレンが水銀の毒性を中和することについては、Pubmedの検索をしてみるとかなり出てきます。
動物実験では、かなり効果有りとも。
ただ、疫学研究が見付けられないんですよね(あったらおしえてください)。ひっかかるのはほとんど毒性学方面の研究。自然な喫食の中で、毒性抑制効果がどの程度働くのか明らかにしようとした疫学研究は現在のところなさそうです。というわけで、有望だけど未知数と考えた方がいいでしょう。
ちなみに、イルカ肉は魚に比べても、特段、セレンが多いわけではないそうです(ネットで書かれていた知識(笑))。
あと、「母親が水銀値の高い魚を食べた方が、子どものIQがよくなるという研究もある」という話は、大元になったアメリカのFDAの研究の一部を意図的にミスリードする形で紹介しているようです。
思い切り簡単に言ってしまうと、有機水銀の神経系や心臓への害を所与のものとして、しかし、魚食がもたらすほかのメリットとどの程度釣り合うものなのかを見定めるための研究から、「水銀値の高い魚でも気にせずに魚をたくさん食べている方が、水銀の害を上回る魚食のメリットがあった」というひとつの結果のさらに一部分だけを取り出したものです。
ツッコミがありましたら、その文献など示しますが、きょうはここまで。(ね、コラムに書くには煩雑でしょう?)
イルカと泳ぎ、イルカを食べる (ちくま文庫) 価格:¥ 840(税込) 発売日:2010-08-09 |
とその部分だけで、びっくりしているワタシでした。
金属元素の分析なら腐ってても可能だから、残っていれば当然誰かが研究してますよね。
水俣病の初期、つまり、急性期の患者さんがたくさんいた時は、同時に右も左も分からない混乱状態だったと想像され、血清が残っていたら逆に、ぼくは大したもんだと思ってます。現時点では。
『さらに……映画では言及されていないんですが、水銀のイルカ自身への影響はどうなんでしょうか。カナダのセントローレンス川のベルーガ(白イルカ)は、水銀をはじめとする重金属が体内に蓄積し、繁殖にも問題が出てきているそうです。生まれてくる子が障害を持っている場合もあります(ぼくの本の中にも書きました)。日本のイルカはそれよりもましな状況だとは思うのですが、長期的に見て気がかりであることは違いありません。 』
↑にあるカナダ・セントローレンス川のイルカに水銀障害様障害が出ているのは、その水源であるエリー湖(五大湖の一つ)の深刻な人為水質汚染が原因です。
『現在においても残存する重金属(鉛、水銀、カドミウム)とPCB汚染は残っており、捕獲した魚は食用には勧められない。現在も続く汚染源として、広大な農地で使われる農薬や化学肥料の流出、降雨時に下水処理場の能力をこえあふれ出る生活汚水も無視できない。』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%BC%E6%B9%96
また「海外の水俣病」として論われる事の多い同カナダ・オンタリオ/ケベック州の水銀障害も「自然由来のメチル水銀」によって引き起こされたものではなく、「人為由来の公害」です。
http://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%83%8A%E3%83%80%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%AA%E5%B7%9E%E3%81%AE%E6%B0%B4%E9%8A%80%E6%B1%9A%E6%9F%93
水銀による傷害の危険性を書く時に、それが自然由来の水銀なのか、人為排水による水銀に拠るものなのか、を明記しないのは「水銀があるから⇒水俣病になる」という悪質な誘導をするイルカ愛護団体と何ら変わるところが無いと思われます。
「傷病原因となる水銀を含む人為排水等」と、「水銀と同時にセレン化合物も含む海棲生物の肉」では体内での作用が全く違う、という研究は幾つも発表されています。
これに明確な機序の解明・疫学的な説明がついていなくとも、「公害以外」での海棲生物由来水銀によって傷病発症したケースが一例も無い事から、両者の峻別は明確に行われるべきですよね。
一般には「メチル水銀」が自然界には存在しない人工の化学物質だという認識が非常に大きいようでして、自然界に存在する「無機水銀」をバクテリアが取り込んで「メチル水銀」を作っており、人類が魚を捕り始めるよりももっと太古の昔から海棲生物の体内にはメチル水銀が存在していた、という事実を知らない人間にとっては脊髄反射的に「水俣病になる!!」という反応をしてしまうようです。
日本の水俣病は勿論、上記オンタリオ/ケベックの魚食原住民被害に関しても始めから「メチル水銀として」超高濃度で排出されている場合はセレン/セレン化合物の無毒化が追い着かないようですが、そもそも自然海水中の水銀/セレンのモル濃度は1:2800ほどで圧倒的にセレンが多く、水銀含有量の高い個体ほどセレン含有レベルも高いので、太地町などの様な工業汚染地帯でない広域海棲のイルカと、公害汚染された狭い河川内だけでの食餌を強いられているシロイルカを同列に並べるのは不適当です。
セレンの水銀無毒化による疫学的な研究が無い、という事でしたが、「セレノメチオニン」や「亜セレン酸」に関してはある程度その機序が解っているようですし、セレン以外でも「オメガ3脂肪酸」がメチル水銀毒性をブロックしている、という研究も有ります。
http://blogs.yahoo.co.jp/toripan1111/14277654.html
http://blogs.yahoo.co.jp/toripan1111/15286764.html
http://blogs.yahoo.co.jp/toripan1111/15372334.html
http://blogs.yahoo.co.jp/toripan1111/16108649.html
考えてみれば、メチル水銀というものは海棲生物にとって自分の身体を作る材料と共に「常にそこに有った」のですから、「神経毒性を持つメチル水銀がそこに有る事」を前提に進化してきたわけですから、日本でイルカ肉を食用利用しだして8000年、能動捕鯨を始めてからでも5000年の歴史があるのに、イルカ肉食への禁忌伝承の一つも無いのは当たり前の事なんじゃないでしょうか。
(このあたりの事は川端さんの方がずっとお詳しいでしょうけども)
それから、海水中の水銀濃度は水俣・チッソ工場に代表されるような「排水」だけではなく、石炭等の化石燃料の燃焼によって放出⇒海水へ入る、ので「だから海水中の水銀は江戸時代なんかより増えてる筈!!」という反応された事が有りますが、少なくとも日本周辺海域の水銀濃度はこの20年以上「横ばい」だそうです。↓
http://www.data.kishou.go.jp/obsenv/cdrom/report/html/6_2.html
近隣諸国の発展・工業化目覚しかったこの四半世紀を考えれば、これでも尚水銀濃度が上がってない、という事はあからさまに環境基準を無視するような「違法排水海域以外」での「イルカ肉由来水俣病」は一切心配する必要が無い、と判断して宜しいかと思います。
だって、この状況で「昔無かったイルカ肉由来水銀傷病」が現代にだけ現われる理由がありませんからw
川端さんはイルカ漁や捕鯨に関して永年専門的に取材してらした方ですから、貴方が日経web新聞の様な媒体に掛かれる時は反捕鯨団体や一般のイルカ愛護さん達の投書やブログと違って影響力が非常に大きいと思います。
少なくとも先の記事の様にイルカやイルカ肉の水銀に関して書く時は、それが公害等の人為由来であるかどうか、という事と自然由来水銀ならばセレンによって「無害化されてる可能性」だけでもアナウンスしておくべきで、それがないまま書かれては「イルカを守る」目的で「食の安全」を翳して恐怖を煽り、イルカ肉によって生計を立てている人々を脅かしてる国内外のカルト団体と同じです。
それと、これは書き忘れですが
>ちなみに、イルカ肉は魚に比べても、特段、セレンが多いわけではないそうです(ネットで書かれていた知識(笑))。
これはあくまで「水銀の含有量に比して」⇒「イルカ肉中のセレンの含有量が多いわけではない」という話ですよね?
(他の)魚と言っても水銀値の高いカジキマグロから鰯や秋刀魚、それこそ白魚までの「小魚」に含まれるセレンは全く違いますが、推進含有量の多い魚種・個体はセレン含有量も多い、という調査結果は出ています。↓
『先の記事で引用した遠藤博士の論文では、セレンの濃度も測定していて、セレンの解毒効果を示唆している。
総水銀量が多いサンプルではセレンも多くなっている、という正の相関が指摘されている。以下のように論文要旨にも書いてある。
【A high correlation was observed between T?Hg and selenium (Se) concentrations in these
organs, supporting the formation of a Hg?Se complex. The formation of a Hg?Se complex
probably contribute to the detoxification of Hg for cetaceans and allows a very large
accumulation of Hg in livers.】』(元のURLは現在消失してます)
川端さんのその書き方だと、
「イルカには魚の数百倍もの、大量の水銀が含まれるが、一方セレンの量は魚に比べて多いわけではない」
と理解してしまう人が出てくるかと思います。
水銀値の高い大型魚やイルカのセレン含有量が小魚並みだったら、人間の水銀障害などより先に彼等自身が水銀障害によって滅んでると思われますが・・・w
先にも書きましたが、この話題を好んで論う人達にはこのあたりの事を「自らが望むように誤解する」場合が往往にして有ります。
このブログならまだしも、日経webの様な巨大媒体にこのような誤解を招くような記述はされないように御願いします。
違った意見がかくもあるのだ、という点において。
ざっと読んだところ、ぼくの意見がいただいたコメントによって変わる部分はほとんどなさそうなのですが、じっくり読んで意見が変わりましたら、その旨、エントリに反映させます。
それがさらに重大なものだと感じたら、WOLの方にも訂正を入れるかもしれません。
一点、疫学研究と機序の研究はちがうので、ご理解を。
ただし、「集団を対象にする秩序ある研究」という部分以外については諸説あり、国際的な合意は得られていない。
国際疫学学会の定義は「特定の集団における健康に関連する状況あるいは事象の、分布あるいは規定因子に関する研究。また、健康問題を制御するために疫学を応用すること」である[2]。』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%96%AB%E5%AD%A6
尤も、最後の段落「何故イルカ肉由来の水銀では病気が起こらないのか」という意味でセレン化合物やオメガ3脂肪酸の体内での働き、メチル水銀との作用、という機序を明らかにするのは疫学の範疇になりますね。
また、現実にセレン以外にも海棲動物に多く含まれる「オメガ3脂肪酸」が無毒化に働いてる可能性が示唆されてますので「セレン/セレン化合物だけ」での無毒化と「イルカ肉(に含まれる様々な物質・勿論酵素等も含む)」での無毒化は意味が違います。
実質的に用を成すのが後者であるのは自明の事だと思いますが。
>また、ご紹介の研究は疫学研究とはいえません。疫学の研究デザインではないですから。
では、wiki「疫学」の
『特定の集団における健康に関連する状況あるいは事象の、分布あるいは規定因子に関する研究。』
という記述部分は誤りである、という事で。
疾病要因(になる筈。単体では)のメチル水銀、又はそれを体内で悪作用させなくさせるセレン等は「健康に関連する事象」の「規定因子」そのもので間違いないと思いますし、その無毒化機序を研究するのが「疫学」でなければなんと呼ぶのでありゃろうか・・・?
私にとってはそれを疫学と呼べるかどうかは別に問題ではありませんのでこれ以上は争いませんけどw
ついでですので、海水中のセレンが水銀の2800倍(モル比で)も存在してる、というソースも貼っておきますね。↓
http://www.littlewaves.info/marine/kw_seaelement.htm
海水中の各種ミネラル含有率と濃度一覧↑
それをモル比換算すると水銀:セレンが1:2800になる、という説明は↓のコメント欄で。
http://blogs.yahoo.co.jp/toripan1111/14277654.html