牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

今年最後の上場

2008-12-27 00:17:21 | 枝肉


年の瀬も押し迫り、最後の出荷牛の販売結果がFAXで届けられた。
去勢牛9頭、雌牛1頭の10頭であったが、5等級4頭、4等級6頭の結果であった。
1頭当たりの平均値は、仕上げ体重788kg、と前体重768kg、期間DG0.68kg、枝肉重量515kg、枝肉歩留67.0%、枝肉単価2,070円、販売価格111万円、差益2.5万円であった。
上物率100%をものに出来たが、これでも、5等級のみが黒字で4等級では全てが赤字であった。
現状では、良い枝肉を作らなければ確実に赤字経営となる。
素牛価格が「中の下」から「中」程度の導入牛の結果にしては、まずまずの成績であり、それ以上のクラスの素牛であれば、かなり厳しい結果であろうと予測している。
今回の結果は、近況からは成績に恵まれた方であり、気分良く有終の美を飾れた結果に満足している。
このところの枝肉価格の低迷は、不景気が牛肉消費の減少に反映され、そのことが大きな原因になっている。
年明けの1~3月期は、配合飼料の下落は実現しそうな状況であるが、20%の下落でも経営は安定とまでは行かないと判断している。

さて、連日300人を越す多くの皆様に拙いブログを開いて頂き、誠に有難うございました。仕事と様々な用事を抱えながら、2本のブログに挑戦中のため、些か寝不足気味で、血圧降下剤をお医者様に勧められております。
誠に申し訳ありませんが、明日より年明けの4日頃まで休載させて頂き、休養を取らせて頂くことと致しましたので、皆様にはご理解頂きますようお願いいたします。
皆様には、どうぞ佳いお年をお迎え下さい。
今年一年間有難うございました。



牛の発育とともに心がけること

2008-12-25 21:22:08 | 牛の成長



運動場のある導入牛用の畜舎にいた牛たちは、導入から3~4ヵ月経てば、運動場のない育成用の畜舎に移動する。
写真はさも順調に移動しているように見えるが、実際は牛数が18頭で、その半数は、後ろの方で逃げ回っている。
複雑な道順のため、7~8名で追い回しているが、時には牛の動きを把握していない者がいれば、こういうことになる。
山に逃がさないように、寒い最中、汗水流して追いまくっている。
移動先の畜舎へは、牛たちを誘導するために、2トントラックやホイルローダーや軽トラなどを壁になるように駐車させて誘導路を確保する。
要所要所では、竹箒などを手に手に、牛らを逃がさないよう誘導して舎内に移動させている。
移動時に気を付け無ければならないことがある。
給水である。運動場付きの畜舎は水槽で好きなように給水させているが、育成牛舎では、ウォーターカップに変わる。
ついうっかりしていると、2~3日、ひどい時にはそれ以上給水していない牛がいることがある。
観察観察と口癖だが、これらは給水のことを問題なく飲んでいるとして、飲んでいないなどは頭から完全に消え失せているための結果である。
牛を移動するときは、先ず導入当初に必要な管理の数々を初手から確認するなど細心の注意を怠らないことである。
子牛は日に日に大きくなる。そのことで、心がけなくてはならないことが多々ある。
鼻環を装着した子牛は、次第に鼻鏡の幅が広がるために、鼻環が鼻孔に食い込むことがある。
また鼻環を装着し、それに頬綱をかけていれば、頭部が大きくなるために、頬綱がきつくなり、鼻環が鼻孔に食い込んでしまう。
こまめに観察して、頬綱をほどよく緩めてやる必要がある。
子牛用の畜舎では、子牛が逃げないために、飼槽側の横棒の高さを子牛用に低くしているケースが多い。
子牛が発育することで、それが低くなり、頚峰の辺りを擦り傷ついたり、飼槽への頸出しを不自由し出す。
子牛舎は、その横棒の高さを調節できるような構造にすると便利である。
子牛でなくても、発育とともに、伸びるのが四肢の蹄である。
導入後仕上げて出荷するまでに、最低2回の削蹄が必要である。
また、子牛用の舎房幅は決まっているため、牛が次第に体幅を広げるので、全頭が同時に飼料摂取が可能になるようなスペースを考慮し、再び牛の移動などを考えなくてはならない。
そのままにしておくと、群飼内で強弱関係が顕著になり、群内での体重差がひどくなる。

牛の性格は人に似る

2008-12-23 20:01:01 | 予防治療



犬猫だけでなく、牛でも、相手が危害を加えるか否かを直感的に判断しているようである。
一方人同志の場合、顔に現れる表情や、語り口、様々な癖などから、ある程度の性格判断ができる。
牛の場合は、人なつこさに差があったり、角で威嚇したり後肢で蹴るなどの有無や複数飼い時に強弱関係があったりする。
また、舎外にいる人や動物への反応が神経質で敏感なのとそうでないのもいる。
これらの反応は、危害と感じる場合と甘えからの場合とにそれぞれ異なっている。
牛毎に、反応が積極的な牛と臆病な牛もいる。
つまり、これらの反応は知的かそうでないかの違いはあるが、人の場合と差ほどの違いはなさそうである。
これらは、日頃人がどのように接しているかによって、個々に差がある。
よく、牛だけでなく犬猫でも、餌を与えている人には、人なつこくなると聞くことがある。
しかし、それは必ずしも正解ではなく、与える人の性格によって若干異なる。
餌を与えなくても、なついてくる場合も多々ある。
牛とのコミュニケーションに無関心な飼い主の場合や、ことある毎に怒る飼い主の場合、牛も上記したような近付き難い様々な性格になる。
もともと子牛の時から性格の悪い牛はあまりいないはずで、牛は、飼い主の性格を概ね引き継いでいるように思われる。
牛の性格は温順であり、神経質でない方が、餌の食い込みも良く、常に安心して就寝したり反芻するために、増体速度も速く、肥育成績も良好であると判断している。





寄り添って

2008-12-22 22:49:27 | 予防治療



気温が昼間でも一桁台に下がる。
それでも天井に吊された畜産用換気扇は稼働し、舎房の床面へ向かって冷たい風が舞い降りてくる。
当然牛たちにも同様に風が当たる。
アンモニアガスを吹き飛ばすためと、敷き料の大鋸屑の水分を飛ばすためである。
冬場の寒い時に、換気扇は牛にはストレスとなろうからスイッチを切るか、風力を弱めるべきではと、メーカーに問えば、寒くても回転数は落とさない方がいいと言い張る。
夏であれば、暑気払いのため換気扇の風の中心に牛たちは、寄り添って寝ている。
ところが冬でも風を差ほど気にするようでもなく、群飼いの牛たちはしっかりと寄り添って寝ている。
風をそれほど気にはしていないようである。
夏は牛同志が重なり合うことは無いが、気温が低い冬場は、写真のように頭部を他の牛の背中などに重ね合っている風景が多く見られる。
肥育牛は、就寝時に反芻することが一般的だが、身体を重ね合って寝ている時は、熟睡していて、反芻しているのは見かけない。
人と同様に、寄り添う時は安心感から熟睡に繋がるのであろう。
肥育的には、「寝る子は育つ」でこの状態は非常に好ましいことである。



シラミのシーズン

2008-12-21 18:33:14 | 牛の病気
肥育牛には、冬になると外寄生虫であるケジラミが発生する。
牛に付くケジラミは何種類かいるらしい。
本来は、皮膚や毛に年中寄生しているらしいが、シラミのライフサイクルの関係で、冬になれば成虫になるため、家畜の皮膚に食いついて家畜が痛みを感じるために、その部分を牛自体が舌で強烈に舐めたり、柱などで擦るために、被毛が無くなり、傷が点在する。
こうなれば、牛は落ち着かず、無駄な体力を消耗し、餌の摂取量も減るため、肥育成績に影響する。
梅雨時にも同様の寄生があるらしいが、肥育牛の場合は、ほぼ冬間が多い。
駆虫剤はあるが、問題は頭数が多いため、担当者が面倒がるために大事になってから、駆虫にかかることが多い。
最近は、牛の背筋に沿って液体の駆虫薬を掛けることで駆虫できるものが一般的となっている。
粉剤であれば、ストッキングの中に入れて、ぽんぽんと体表面に掛けたり、手が届かない場合は、ストッキングは弾力性があるので、入り口付近を持って、先っぽに薬剤の入った部分を牛の係る箇所へ投げつけて駆虫している。
1m以上でもうまくいく。
いずれにしてもマスクは必要である。
牛が可哀想だと思う人は、すぐにでも駆虫せずにいられないはずである。


日光浴

2008-12-19 20:43:13 | 牛の病気







寒気の合間の日だまりは、牛でなくても心地よい。
11月競りの導入牛は100頭であるが、乾草での飼い直しが思い通りに順調に進んでいる。
導入牛は、牛舎条件により5頭、7~8頭、14~15頭飼いなど様々であるが、何れにしても当初は乾草主体で、2週間程度の間に、ふすまと発酵飼料を少しずつ与え、その後前期用も加えていき、1ヵ月余り経った現在は、各牛1頭当たり乾草を約4kg、ふすま1kg、発酵飼料1.5kg、肥育前期用1.5kgをペロリと平らげている。
これで、下痢や軟便になれば、稲わらを0.5kg加えている。
落とした体脂肪のために、多少スリムになったが、乾草のために若干腹容がで始めている。
概ね順調に経過している。
これからは、ふすまを切り、次第に発酵飼料と前期用を増やし、導入から4.5ヵ月頃までに乾草4kg、発酵飼料3.5kg、前期用5kgを食い込ませる。
それ以降は、この3種類を徐々に減らし、稲わらと仕上げ用配合を徐々に併用して切り替えていき、6ヵ月までに稲わら1.5~2kg、仕上げ配合7kg程度に増やし、生後月齢19~20ヵ月では、稲わら1kg、配合11~12kgを食い込ませて、いよいよ仕上げ牛舎へ移動し、2~3頭飼いに替える。
この時点で、体重を600kg以上にしておく。
この間に風邪や下痢を引き起こす牛は、その間増体もしないし、ビタミンAの消費が増え、仕上げ舎に入って1~2ヵ月目頃に同A欠乏症状となる。
この時期に、同A欠乏症の治療を施さざるを得ない牛は、増体は800kgになるが、本来の肉質能力は引き出せない。
常に糞の状態を監視する必要がある。
要するに、肥育牛は、常時健康に育てると言うことである。
それには、育成時の日光浴も重要な要素の一つなのである。
運動場付きの育成牛舎または、日当たりの良い牛舎が理想的である。


最高級牛肉ア・ラ・カルト

2008-12-18 00:59:46 | 牛肉



最高級和牛すき焼き肉であるが、よくよく見ると素晴らしい芸術品である。
実に美しい霜降り様斑紋である。
この様な芸術品は、なかなかお目にかからない。
この芸術品の含有脂肪量は年々増加傾向にあると言われている。
またこの芸術品は、年間数十万頭の出荷牛の中で、数百頭しか出現しない。
これくらいの出現率だから、希少価値として珍重がられる。
これは黒毛和種だけがその能力を有し、世界に類を見ない希有な能力であるとされている。
この芸術品の発現を期待して、購買者は法外な価格で子牛を落札する。
この夏だったか、鹿児島では、去勢牛で104万円が出た。
現在の市況平均であれば、2.5頭分に相当する。
おそらく、著明な枝肉共進会をターゲットとしての目算があってのことであろう。
その牛が、目論見通りに芸術品となることを願うが、結果は肥育が終了し出荷してみないと判らないのが、肥育の世界である。
子牛価格が50万円クラスでも芸術品は発現している。
現況では5等級、少なくともBMS値7以上で、枝肉重量が500kgを目指すことで、赤字からは逃れる。
それ以下ではほぼ赤字を免れない。
去勢牛の若齢肥育が普及し始めてから、およそ45年になる。
以来、国内外の産業界も研究機関も脂肪交雑に関する研究を持続している。
しかしながら、その成果が肥育現場で実用化されるまでには至っていない。
脂肪交雑に関するBMS値などの平均数値が年々上昇していることは事実である。
それらは、アニマルモデルなどの育種の手法が生かされて、経年的に優秀な種雄牛が作出され、その結果、年々優秀な産肉能力を有するそれらの産子が出現していることによろう。
希少価値的な芸術品であるが、様々に好転してこれが、仮に全体の数十%の割合までを占めるようになれば、その価値自体が下がる可能性が高い。
そうなれば、そこで問題となるのは、芸術品は単なる食材なのか、最高の食材なのかである。
それにしても芸術品は、柔らかく、肉汁が多く、これぞ霜降り肉の伝統の味で、最高級の美味しさや風味を持ち合わせていることだけは確かである。

低コスト生産

2008-12-16 23:05:02 | 肥育



肥育素牛を50~60万円で導入し、如何に効率よく低コスト生産が出来ないものかと日夜思考を巡らしている。
肥育の上での低コスト生産は、先ずは素牛価格を抑えることにある。
乳雄やF1牛を導入するから、低コストも実現する。
それらの肥育成績を鑑み、和牛用の配合飼料よりカロリーやエネルギーの少ない安価な飼料が利用できる。
ところが、高価な和牛の場合、その潜在能力を引き出そうとするため、低コストを意識しても実現はなかなか難しい。
現況のように和牛肥育の大多数が赤字状態の時、低コストが実現出来なければ、如何にしてその赤字を縮小するかである。
先ず、肥育期間の短縮、そのためには仕上げ時期を早める肥育法を取り入れなければならない。
育成時の栄養状態を高め、早期に体脂肪の蓄積を促すことで、仕上げ期を早める。
この場合、肉質は良くなるが、牛の発育が抑制されるため、枝肉重量が500kgに満たない。
肥育期間を短縮すれば、仕上げの要素である肉の締まりやきめ、肉や脂肪の色や光沢など熟度が浅く、腿抜けも少ない。
それらの肥育法へ移行した場合の飼育コストと枝肉評価や販売価格を予測しながら、今後の一つの選択肢として取り組まざるを得ないのかと、その判断に苦慮している。
肥育期間を短縮するには、総体的に肉量肉質の低下は免れず、しかも肥育牛特有の疾患などの発症率も高いことが予想される。
この様な現状下で、今朝の新聞報道はトウモロコシの価格が下落したという、コストダウンに繋がる朗報である。




年末・牛肉の消費

2008-12-15 23:59:51 | 牛肉



近年にない不景気だと言い、牛肉の消費が落ち込んでいる。
すじやホルモンが売れているそうだ。
年末の注文を取っても牛肉そこそこに豚肉が増えているとも聞く。
このままでは、肥育にしても、子牛価格にしても低迷からの脱出は当分時間がかかりそうである。
この様な状況下では、何れの経営でも、良いものを低コストで効率よく生産する経営努力を実現することで、損益が改善されるはずである。
とくに、肥育経営は規模が大きいだけに、また規模が大きいほど現在の経営は、かなり厳しい状況にある。
地産地消が各地で叫ばれているが、牛肉の場合は、馴染めない生産消費動向である。
ところが、コンビニ弁当などでは、それを謳い文句に県内産牛肉を利用するという。
また牛肉消費は、必ずしも都会消費だけではない。
生産者を含めて、地域での消費拡大を強化する取り組みに、生産者もその一端を担うことも一考であろう。
当センターでは、農村地域にあるが、食肉店と提携し年末セールとして自家生産牛肉の注文を取り販売している。
すき焼き肉としゃぶしゃぶ肉、焼き肉用を100g当たり400~1,800円を段階的に設定して販売しているが、例年1,800円クラスも結構出ている。
お客の反応は、なじみの牧場産だから信頼して買えるそうである。
因みにチラシは食肉店が調達し、牛肉は注文に添って、食肉店がパック詰めし、当方で、食肉に触れることは一切無い。
注文を受けるだけである。




素牛用看板

2008-12-14 01:11:21 | 牛の管理








肥育牛は、2ヵ月毎に導入するために、同じ牛舎にも月齢の異なる導入牛が様々である。
従業員の誰もが、給与などの管理が出来るためには、牛房毎にその牛たちの詳細を白墨で記載して房毎に掲げている。
房番号・導入日・産地・管理番号と個体識別番号、血統などを掲載することによって、月齢を確かめながら、マニュアル通りの飼い方が統一できる。

鹿児島県内ではあるが、何処の市場に出てくる子牛の血統も、似たり寄ったりで、優秀なものが揃っている。